Members Column メンバーズコラム
ミラノ・ロンドンで感じた日本の地場産業の可能性
北林功 (COS KYOTO株式会社/一般社団法人Design Week Kyoto実行委員会) Vol.417
2回目のコラム執筆となります、COS KYOTO株式会社の北林です。おかげさまで弊社は2013年4月の設立以来、5周年を迎えることができ、先日は弊社オフィスにて謝恩パーティを開催することができました。多くの方々に祝って頂き、本当に人のご縁で生かされているということを感じ、感謝の思いでいっぱいになりました。ありがとうございます。
さて、5周年記念パーティの前に4月にミラノデザインウィーク、5月にロンドンクラフトウィークに出展するという、弊社として大きな出来事がありました。弊社では「MoonShine materials」というブランド名で日本の地場産業の素材・技術を、主に海外のインテリア関係の市場へ紹介・販売する事業を昨年より開始しました。ミラノデザインウィークは街中をあげて行われる世界最大のデザインの祭典です。私たちは現地の方のお力も頂き、現地の富裕層向けインテリアテキスタイルのショールームの一部で西陣織の技術を用いた生地素材を展示・紹介する取り組みをしてきました。ロンドンクラフトウィークでは、NOBUホテルのロビーにて、京都府の事業の一環として京都の工芸を紹介する取り組みをしてきました。
このように立て続けにヨーロッパの地で日本の地場産業を紹介する取り組みをしてきたことで、たくさんの学びがありました。まず、当たり前のことですが英語での直接コミュニケーションはやはり必須です。ロンドンは当然のことながら、ミラノでも世界中から集まった人たちが英語で語り合っていました。流暢ではなくとも、こちらの意思を明確に分かりやすく伝えること、そして毎日のように各所で開催されているカクテルパーティーなどに顔を出し、人間関係を構築できるようにビジネス以外の文化・教養も含めた会話を行なうことが求められます。ミラノデザインウィークもロンドンクラフトウィークも共に、街中の店舗やショールーム等、日常の場を活用した形の展示・交流がほとんどです。そのため、卸やデザイナーといったプロの方々だけでなく、エンドユーザーの方々もたくさん来られます。
そして、ミラノでもロンドンでも世界中から多種多様なものが集まっていましたが、品質だけで勝負できる要素はかなり少なくなっていると言えるでしょう。日本の製品は確かに優れていますが、世界中の製品と大差ありません。
そのため、いかに自分たちの特徴や強みといったアピールをしっかり行なうことはもちろん大事ですが、相手の国の文化や思考背景等を踏まえて、相手に響くストーリーを組み立てて、自分たちの素材や技術などが、その相手にとってどういう価値をご提供できるかを「スペック」以外の面でも語っていくということが重要になります。
そこで求められるものが、地場産業の場合は特に背景にある「文化の芯」です。これは私の恩師である同志社大学大学院ビジネス研究科の村山裕三教授から教わったものです。時代の移り変わりによって、地場産業も様々にアップデートをしていくことが求められるのは当然ですが、守るべきものがあり、それを変えてはならず、その変えてはいけないものが「文化の芯」ということです。
この「芯」とはなにかということは、色んな業種によって様々だと思いますが、自分としては、ここ数年の取り組みの中で見えてきたものを「真正性(Genuineness)」と考えています。自分なりの現在の定義は、次の5つの要素から成ります。
1.誰が(Who)
2.どこで(Where)
3.どうやって(How)
4.どんな想いを込めて(Passion)
5.どんな背景を背負って(Background)
この5つの要素を明らか(OPEN)にしていること、そしてそれぞれの要素が高度に組み合わさり、意味のあるストーリーとして相手の心に響く表現になっていることで、「芯」として世界の様々な人たちが共感し、感動するものになります。
まだまだ考える余地はありますが、この真正性を示せるかどうかが地場産業をグローバルな文化ビジネスとして成立させていくための第1歩だと考えています。
KNSの皆さんとも交流を深める中で、このあたりのことを一緒にブラッシュアップしてければ嬉しいです。今後共どうぞよろしくお願いします。