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身近な歴史、遺しませんか?

河村英也 (株式会社エトレ)  Vol.410

河村英也

最近、歴史に関心があります。といっても、戦国時代や明治維新などの歴史ロマン的なものではなく、今の自分の暮らしにつながる身近な歴史についてです。

きっかけは社史制作の仕事。今はクライアント対応を担当しているため行っていませんが、以前、企業の社史の編集を行っていたことがありました。50周年、100周年などの節目に、創業からの歴史をまとめて本にする仕事です。

社史制作は単に現在までの歴史をまとめるだけでなく、歴史をふまえて将来ビジョンを考えるという役割もあり、それ自体とてもやりがいがあります。しかしそれ以上に、単純に昔のこと、昔の人の考え方などが面白い。昔のパンフレットや写真、創業前後の苦闘や創業者の想い、時代時代の様々な経営上の考えなど、興味深いものばかりでした。

大学の専攻が日本史だったことも歴史が気になる一因かもしれません。もっとも、日本史専攻とはいえ、歴史好きだったという訳でもなく、高校の時には世界史選択で日本史は習っていなかったくらい。ゼミの友達から高校の日本史教科書をもらいましたが、古代史専攻なので中世以降はろくに読んでもいない状態でした。

大学を卒業してからも、仕事はマーケティング・企画関連で、日本史専攻を意識することもありませんでした。それが社史制作に携わるようになった時に、そういえば専攻は歴史だったな、こんなところで繋がるのかと、妙に感心した覚えがあります。

今では、自分のこれまでの歩みや、家族や家系、住んでいる地域、関係する様々なものごとといった自分の周囲の歴史をやはり知っておきたい、という気持ちが強くなっています。

でも、自分のことで考えると、昔のものがあまり残っていないんですね。引っ越しのたびに昔のものは処分してましたから。学校の試験の答案、成績表、クラブの成績、当時の町の様子のわかるものなど、写真も含めて見ることのできるものがあまり残っていません。これがとても残念です。

資料がないと記憶に頼るしかないのですが、この記憶というものがやっかいです。あいまい。しっかり覚えているつもりでも、実際とちょっと違っていることが案外ありますよね。まったく違うことを、実際のことと思い込んでいることもありますし。

しかし、何か記録されたものがあると、記憶のあいまいさをフォローできます。写真でも資料でも何かがあると、それをきっかけに思い出すこともできます。記憶の裏付けになる、思い出すヒントになる。記録に遺しておくことって重要ですね。

そこで最近、普段の暮らしの記録を遺すということを、意識的に行おうとしています。面倒くさがりなので、日記のようにその日の出来事を文章にするのはちょっと大変。だから、どこに行った、何をした、いくら使ったなんかがわかるように、簡単なメモとして記録します。メモすらも面倒なら、写真でパシャパシャ撮る。行った先の様子などを写真に収め、チケットやレシート、買ったもの、手に入れたチラシなども、とにかくスマホで撮っていきます。

社史制作で覚えたことですが、ネタを収集する段階では選ばずに、何でもとりあえず遺しておくべきです。遺すものは選ばない。遺っていなければそのものごとがなかったのと同じですから、とにかくまず遺す。実際のモノで遺せればベストですが、とにかく何でも写真に撮って遺しておけば良いでしょう。

そうして遺した自分の行動記録を改めて見返してみると、自分の周囲の世の中の記録にもなっていることに気づきました。世の中と関わって生きているので、当然と言えば当然。出かけた先で撮った写真など、まさにその場所の記録でもあります。自分の行動を記録することで、今の時代の様々なものも一緒に遺すことができるのですね。

では、たくさんの人が同じように行動記録を遺すとどうでしょう。その時期、その地域がどんな状況だったのか、後世の人々にもわかるのではないでしょうか。パシャパシャと写真に撮っていることが、歴史的な資料になっていくのです。まさに、現代の歴史の記録ですね。

企業の社史のようにまとめ遺された歴史では、編纂の過程でそぎ落とされていくので、実際に現場で行動しているたくさんの人々の動きまでは記録されないでしょう。でも、みんなが自分の記録を遺していれば、それぞれの視点で切り取ったその時代、その地域の歴史を見ることができるのではないでしょうか。

テクノロジーの進化によって、遺すための方法はいろいろと考えられます。SNSでの投稿など、まさに活動の記録。日々の生活の中での経験を、文章、写真で遺し、多くの人に見てもらうことができます。

地域に暮らすたくさんの方々の日々の暮らしの記録データを集めていけば、地域の暮らしの様子がかなりわかるかもしれません。地域に所在する企業や商店、教育機関、各種施設、暮らす人々の行動の記録としての歴史。たくさんの方々の記録から、地域の歴史を組み上げられれば面白そうですね。さらなるテクノロジーの進化に期待しましょう。

みなさんも、歴史として遺すつもりで、ご自身の行動をスマホでパシャパシャと記録してみませんか?

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