Members Column メンバーズコラム

AI時代の大阪万博に「自分の目と足で経験する」大切さを想う

伊藤 拓治 (株式会社BA&C)  Vol.751

皆さんこんにちは。初めてKNSメンバーズ・コラムを書かせて頂きます。皆さんは令和の大阪万博にもう行かれましたでしょうか?私は子供たちには申し訳ないのですが妻と二人でまだ空いていると思われる平日4月24日(木)に行ってきました。パビリオンの事前予約はなく予約なしで入れるところや、当日予約で申し込めたところなどでめぐりましたが予想以上に楽しい経験になりました。

さて、このコラムではパビリオンよりも大阪万博の「大屋根リング」に関わるメディア情報やSNS情報、そして生成AIとのやり取りで考えたことをお伝えしたいと思います。

多くの方が賛否両論を持つ「大屋根リング」。私は建築物から受ける感想と存在意義から「大阪万博をもっとも象徴し、実用面でも有益な素晴らしい建築物」と評価しました。最大の木造建築物(面積)としてギネスブックに載った大屋根リングですが、高さが約20メートル、幅が30メール、内径が615メートル、1周約2キロメートルです。これは京都・清水寺の舞台と同じ「貫(ぬき)接合」工法に現代技術を融合させた作りです。ちなみに京都・清水寺の舞台は高さ約13メートル、幅(東西)約18メートル、奥行き(南北)約10メートルで、清水寺の舞台より7メートルも高く、奥行きが3倍あり、幅を1周と比すれば111倍になる円型木造建築物です。

まさに圧巻でした。そして清水寺の舞台と異なり通り抜けることができます。すなわち「門」としての意味があり、大屋根リングを通り抜けて中のパビリオンに足を踏み入れときに不思議な感動を覚えます。これは神社仏閣や古城の美しい門が多く現存する日本に住む私たちゆえに感じる感動でしょうか。清水寺の舞台から見下ろす京都の町並みは美しいですが、大屋根リングから見える大阪湾に沈む夕日も神戸や大阪の夜景もパビリオンのライトアップや花火やドローンショーも美しく大きな感動を与えてくれました。こんな巨大な木造建築物を作ろうと発想し実現するのは世界の国々でも多くはないでしょう。私たち日本人は木を大切にし、共に生き、それをアイデンティティーとして誇りにしている民族なのだと感じさせられました。ちなみに世界の巨大な木造建築物としてはカナダの「ブロックコモンズ トールウッドハウス」やスペインの「メトロポール・パラソル」があると生成AI(Gemini)が教えてくれました。

当日はそれなりに日差しが強く私たちは大屋根リングに多数あるベンチで涼みました。強風大雨の天気となれば確かに大屋根リングの下でも濡れるかもしれませんが、この巨大な会場で他に身を寄せて雨をしのぐ場所を作るのは、どんな建築物でもなかなか難しいでしょう。ましてや雨や日差しをしのぐモノに大屋根リングのような「感動」まで付与するのは更に難しいと思います。

約350億円という建設コストの高さは大屋根リングの評価における大きなテーマです。確かに万博会場全体の建設費(最大2,350億円)に占める割合は高いです。しかし1周2kmの長さから見ると1mあたり1,750万円です。耐震性や耐荷重性、上り下りのエスカレータやエレベーター等々の付帯設備を考えながら下から見上げると(上から見下ろすと)、戸建住宅の建設費とは対象にならないと判りつつも思い出して「それくらいするのかもしれないなと」と考えました。経産省によれば我が日本の中核パビリオン「日本館」は建設費・内装・展示物や機械設備を入れると総額360億円とのことです。費用の適正さはともかく、両方ともほぼ同額の費用を掛けて人々に与えた「感動」という意味では大屋根リングの圧勝ではないかと推察します。生成AI(Gemin)に「XなどのSNSでは大屋根リングと日本館ではどちらが評価する声が多いですか?」と質問したところ、「大屋根リング」の方が圧倒的に評価は高いとの回答をもらえました。来場者アンケートなどでも「最も印象に残ったもの」として、大屋根リングがダントツで多いという調査結果も出ているようです。生成AI(Gemini)は下記の通りまとめています。「SNS上では、大屋根リングはその「建築物としての魅力」や「世界一という象徴性」から、純粋な驚きや感動、美的評価を得ている傾向が強いです。一方で、日本館はパビリオンとしての展示内容が評価される一方で、その建設費や万博全体の運営面と結びつけて批判的に語られる側面も持ち合わせています。純粋な「評価する声」の量で言えば、大屋根リングの方が圧倒的な存在感と視覚的インパクトを持つため、SNSでのポジティブな言及が多いと考えられます。

ちなみに東京オリンピック・パラリンピックの総費用額は会計検査院による指摘を含む総額(2022年10月)で約1兆6,989億円だそうです。これにインフラ整備費用等を加えると3兆円超の費用が掛ったようです。(TBSのニュース動画より)。大阪万博では建設費(最大2,350億円)とは別に約1,160億円の運営費が掛るとされ、5月現在チケット販売は黒字化目標1,800万枚の6割程度とのことですが、なんとか運営費は黒字化を達成してほしいものです。

「大屋根リング」はXなどのSNSで様々な話題が出ました。批判的なものも多かったのですが、もっともネガティブな気持ちにさせられたのは「使用している木材の多くが外国産/ノルウェー産である。」というもので3月頃を中心に多く書き込まれました。割合はひどいもので9割と指摘。この炎上はXの根拠不確かな書き込みが原因かと思いましたが、マスコミの「日刊ゲンダイ」や実業家で2ちゃんねる創設者のひろゆき氏や前名古屋市長の河村たかし衆院議員の書き込み等が、大屋根リングに批判的な方の追従書き込みと拡散を加速させていたようです。生成AI(Gemini)も原因はマスコミと専門家の誤解や憶測と回答してきました。森林ジャーナリストの田中淳夫氏などは今でも専門家の目から見て外国産材が7割ではないか?虚偽ではないか?と指摘されています。

こうした書き込みは「SNS/Xはデマの急激な拡散と過激な批判を生む」という、SNSを問題視する意見を増やしたように思います。但し逆にSNS/Xで反論する情報の指摘と拡散、根拠サイトへのリンクや支持の書き込みが早期の火消しに役立っているという一面も私は重視すべきと思います。設計者の藤本壮介氏は2月末にXで国産7割、外国産3割と発表。大阪・関西万博公式Webサイトにも記載があると反論。3月12日の秋篠宮ご夫妻が視察された際にもその説明を受けているというニュースの動画や画像がその後も繰り返し投稿されました。4月23日には日本ファクトチェックセンター(JFC)が国産7割、外国産3割を事実と自社サイトとXで発表。また4月11日以降にはnippon.comに掲載された福島県浪江町の株式会社ウッドコアの大屋根リング用木材の製作現場を取材した記事が大量に拡散。その結果、5月の段階では大屋根リングの木材の産地と利用割合に関する投稿はかなり少なくなったように見えます。

どちら側の意見・指摘が正しかったのか、結局外部の私たちには明確な事実も判断もできないでしょう。どちら側も相手は嘘とデマを流していると主張して譲りません。但しそれも踏まえてSNS/Xは私たちに「どちらが信用するに値するか?」という判断基準と、ネット情報かもしれませんが自身の手で調査し判断し易くする環境を提供してくれているように思います。更に生成AIはその調査の時間を大幅に短縮しつつ、範囲も質も向上させることを助けてくれます。その意味でSNSと生成AIは私達の思考と判断に有意義な機会と環境を提供してくれていると実感します。

ネットでの仮想現実のリアリティーが進化し、スマートフォンで何でも情報が手に入り、様々な賛否両論が飛び交うAIとSNSの現代ですが、だからこそ自分の目と足で経験して自分の頭で情報を集め考え、そして判断することが大切だと感じた大阪万博でした。50年後に大阪万博を見に来た子供たちが思い出として語る象徴として大屋根リングは存在するものと思います。もし昭和の大阪万博の太陽の塔のように50年後も大屋根リングの一部でも残って登ることができれば、大屋根リングの上から今度はその子供たちや孫たちに令和の大阪万博の思い出を語ることでしょう。賛否両論はありますが私は一部でもあの地に残しておいてもらえればと思います。私は機会があるごとに大屋根リングに登って令和の大阪万博を思い出すことでしょう。

以上

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