Members Column メンバーズコラム

笑ってまちおこし 商店街で冷凍自販機 始めちゃった

堀 登志子 (商店街アドバイザー オフィスはなはな)  Vol.610

堀

 5月30日月曜日朝6時。目覚まし時計ならして起きた私。つけたテレビはNHK。待ちに待ったらでてきた♪ 「冷凍自販機で地域活性課-尼崎市塚口商店街」
 コロナに入って途方にくれていた店のオーナーたち。慣れないお弁当をせっせとつくる店。協力金がでるようになったらさっさと休業した店。事情はそれぞれ。
 ふだんから仲がよくて結束していて、毎月の定例会で色々な意見をかわしていた塚口商店街。会議はズームになり、それまで自由に色々な意見を楽しくかわしていた会議が、理事長のトップダウンになってしまい、それでもお互いの顔が見たいからと続いていた定例会。コロナが少し落ち着いて、顔をあわせての会議になったものの、一度しみついてしまった「トップダウン」の会議はかわらない。「楽しくない」とこぼす店主たち。顔を見せなくなる店主たちもいる。

 ランチによったアリクイ食堂で「これからどうしたらいい」と話が始まり、「こんなときだから皆で力あわせれることあったらいいよね」「デリバリーとかできないかな」「魚のおろしやっている魚里さん 今 暇みたいだから(なんと失礼な笑) お弁当運んでくれないか(なんと勝手な笑)」ともりあがる。「電話してみる?」と朝の二時から働いている魚里さんを電話で呼び出した。
 「いや うちは昼の12で営業終わるし。こまごまと今も忙しいし」と魚里さん。「今はバタバタするより告知宣伝の時ではないか」「なにができるかな」。「テイクアウト売込み時じゃないか。家で家族で食べること多いだろうし」「それならうちは刺身の盛り合せに手巻き寿司セット」。「うちは小さな子どもも喜ぶパーティーセット」「あの店は・・・」ともりあがる。うんうんいい感じ。自由に話し合ってこそのアイデアだ。
 声かけあってできた「6店舗のテイクアウトパーティーセット」リーフレット。近隣のマンションにまいてみた。さっそく電話予約の入った店もあれば、「この店ずあったの忘れてた」と旧知のお客さんがやってきたお店もあった。

 コロナがなかなかおさまらない中、GOTO商店街の募集。「今は告知宣伝」と方向性が決まっていたから話は早い。さっさと応募用紙をだしてめでたく採択。「笑える今日がここにある~塚口笑店街」情報誌ができた。「笑顔が嬉しい」とそれだけで評判になった。

 そんなこんなだが定例会は相変わらずトップダウンだった。一度しみついた体制はなかなか変わらない。
 でもGOTOで生まれた流れをとめたくなかったので、「飲食店でテイクアウト会議しよう」とよびかける。理事長にも飲食店でないけど来てもらう。飲食店中心なので議長は飲食店メンバーに。わいわいわいわい好きなことを喋る。時に話がずれる。何カ所かで違う話が盛り上がる。私の役目は、「その話はおいといてこっちにもどろうか」「結論はこれだね」と、ずれきってしまった舵をもどすのと、決まったことを念押しして共有すること。

 「塚口商店街ブランドつくりたい」「ブランドが有名になって、商店街ブランドつけたら売れる?そんなふうになりたいね」と話がもりあがる。松葉寿司からの提案。「うちの急速冷凍機プロトンをつかって冷凍食品開発しませんか」・・・のった。みんなの顔が明るくなる。「うちはこれ」「うちはあれ」といそいそ店に帰っていく。試作を持ち寄って、解凍方法の説明書も持ち寄って、みんなで食べて読んで確かめる。「それくらい書かなくてもわかるやろ」と言うメンバーに。「私はわからない。レンジでチンならラップするのが当たり前だと思ってた。ワット数ってなに?」と素人の意見を告げるの私。
 できた冷凍食品を、テイクアウト祭り(各店のテイクアウトを持ち寄って一カ所で販売したイベント)で販売。私はせっせと説明役。一個売れた時は嬉しくてグループLINEに連絡。「え 売れたの」とみんなの反応。「売ったのさ」とちょっと鼻がのびる私。

 地元の尼崎信用金庫が「エコ活動を応援するグリーンプレミアム」を募集している。と情報が入る。「優秀賞100万円とれるんちがう」と盛り上がるアリクイ食堂と私。「いやいやとれても10万円のアイデア賞」と冷静な魚里と理事長と・・・。聞き取ってかたちにして会議で話し合う。「書類審査で10社に残った」と嬉しい連絡。プレゼンテーションのお稽古をして最終審査へ。なんととれちゃった「最優秀賞」

 もらった100万円。どうすると話し合う。「冷凍自販機がすぐとりかかれていいのでは」となる。メーカーにコンタクトしてショールームへ。「意外に一戸のブースが小さい」「うちの商品はいるかな」と頭がいっぱいになる店主たち。
 「リースにしようか」話がまとまりかけたところへ、「リースもったいない。いったん私が買いましょう。みんなは5年かけて月割りで家賃で返してもらえたら」と太っ腹な提案。「イタリアンbarNoの」。店頭にもおかせてもらえることとなった。立地条件は申し分無し。人通りの少ない商店街の端っこに位置して、だんとつに人通りが多い。一日昼間タイムで7000人。「5年間Noのさんに負担押し付けるの辛いよね。1ブースについて10万円ずつ保証金払おう」と決まる。なんてすてきなひとたち。
 2022年4月29日冷凍自販機始動。売れた。最初から快進撃。毎日通るたびに在庫をチェックしてくれる炭焼きステーキ六段。ゴールデンウィークが終わっても売りゆきは変わらない。カツサンドが良く売れている。確かに美味しい。パンを一枚ずつフライパンで焼いているらしい。「腕が腱鞘炎になった」となげく六段のシェフ。「キッシュもいいけど やっぱりスイーツ売りたい」と商品開発をせっせとすすめている菓子工房ぷちぷち。次はどんなカレーと頭をひねっている花山葵。みんなが楽しそう。

 尼崎市の保健所から電話をもらう。いってきた。説明をうけつつ質問する。質問の都度確かめてくれる。「始めての事例なので」と一回ずつ確かめて。所内で話し合ってくださる。次の日に「昨日こういったんですが、所内で話しあってこうなりました」と電話が入ったりする。応援してくれている。「一緒に尼崎市のブランドとして盛り上げていきたい」といってくださる。
 マスコミもどんどんきてくれた。先日の会議では「次は」の話がでてきた。すごいぞ。さすが「笑店街」をキャッチフレーズにかかげる塚口商店街。
笑を掲げて「いつも笑ってもらえる街です」と宣言し、寄って声かけあって、隙間にこぼれた言葉をちゃんと拾って。その過程で生まれる信頼関係。これからが楽しみ。

 視察に来ていただくと・・・アーケードも人通りもない小さな商店街です。「がっかり感半端ない」なんて言われてます(笑) 夜になると提灯に灯が入ってざわざわし始めます。ぜひ夜の灯がともる頃 いらしてくださいませ。笑顔の店主たちご案内します。ちなみに冷凍自販機は24時間無休営業しております。

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