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中小企業診断士の業務・職責

廣田光政 (一般社団法人滋賀県中小企業診断士協会)  Vol.310

廣田光政

「中小企業診断士」の資格が、ビジネスパーソンの資格取得希望で最も人気があるという新聞記事を読んだことがある。これは、中小企業診断士の試験内容が経営全般にわたるものであり、ビジネス現場に直結する知識修得になることと、また経営コンサルタントとしては唯一の国家資格である、という理由からだと思う。ビジネス現場でそのまま活用できる資格であるから、資格取得後も独立せずにいわゆる「企業内診断士」として活躍する割合が非常に高く、70%以上と予測されている。このことは、弁護士や税理士など他の士業とことなり、法令で規定された独占業務が無いことも理由として挙げられている。

 どのような業務をしているのか?と問われると、私は、「中小企業診断士の最大の業務は、国・県・市・町等の公的施策を中小企業者や創業希望者に活用していただく支援です。」と答えている。因みに経済産業省令では、中小企業支援事業における経営診断または助言を担うものと規定されている。最近では、国から経営革新等支援機関の認定を受け、一層、公的施策推進業務に携わることが多くなっている。パターンとして分類すれば、中小企業への経営アドバイス、講演・教育訓練、調査・研究、執筆業務等となるが、以下に具体的な事例を挙げて、中小企業診断士としての実務をPRしたい。

【経営アドバイス】
1.公的施策活用
経済産業省・中小企業庁をはじめ、厚生労働省や文部科学省など各省庁の補助金申請を中心とした施策活用を中小企業経営者に紹介し、あるいは要請を受けてアドバイスを行っている。施策は数えきれないほど多岐にわたるため、一般的に日々の経営業務に追われている中小企業経営者が自ら自社に沿ったものを見出すことは難しく、また見つけても詳細に記載された補助金要項を自ら判読して申請に向けた事業計画をまとめ上げて行くことは大多数の中小企業経営者にとって多忙な経営現場の中からは実際上、無理な場合が多い。それに最近の補助金施策は競争的資金と呼ばれており、申請要件に沿って申請さえすれば採択されるものでは無く、大抵の補助金において申請企業が提出する事業計画の優劣が審査され、優れた案件だけが採択されるため、やはり外部専門家のアドバイスが必要になる。
ここで、施策ごとの趣旨や要項を企業現場に合わせて分かり易く説明し、経済動向や市場、業界の現況などにマッチした事業計画になるよう、ブラッシュアップして行くのが中小企業診断士としての業務となる。直近のケースでは、平成27年度補正「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」などがあり、補助金額も1千万円、3千万円から億円単位まで多額に上るため、申請される中小企業者も必死であるが、アドバイスを行う中小企業診断士も採択可否結果でそのレベルを問われることになり、責任やプレッシャーを痛感している。
このような補助金は、地方自治体もそれぞれの特色ある施策を打ち出されており、中小企業診断士としては、これら多くの施策に通暁している必要がある。
2.個別企業の経営実務
 個別企業や組合の経営診断を行い、それぞれの課題・問題についてアドバイスを行う業務も重要である。経営管理、販路開拓、労務、財務、新規事業計画、事業再生、事業承継など、事業所ごとの色々な課題・問題を現場の視点から解決に向けて助言・支援を行う。簡単な数回程度のワンポイントアドバイスもあれば、当該事業所の経営組織体の中へ入り込んで伴走支援を行う場合もある。いわゆるハンズオン支援と呼ばれるものである。中小企業の場合、一般的に人・物・金の経営資源に乏しいことが一般的であるため、現場の実情を十分に把握して、当該視点で支援を続けることが重要である。「○○理論」では無く、それぞれの現場に即した「実務支援」が必要となる。
3.創業(開業)支援
 廃業が多く開業が少ない、少子高齢化による地方の市場縮小などを背景に国の地方創生施策においても、創業支援が強く要請されている。滋賀県の中小企業診断士協会においても特定創業支援事業の下に毎年創業スクールを開催して、開業を希望する方々に経営・財務・労務・販売など企業経営の基盤となる知識・実務をアドバイスしてきた。最近の傾向として、利己的な儲け主義一辺倒ではなく社会性やグローバル性を経営ビジョンに挙げる若者の創業希望者が多くなり、支援する側としてもやりがいを感じている。これら創業希望者の場合、現在未だ社員として勤務中の方も多く、当方は土・日・祝祭日や夜なども創業相談にのっており、1年365日、1日24時間いつでも相談OKで支援を行っている。
今年のゴールデンウイーク中にも相談予定が組み込まれており、結構創業相談は多忙を極めている。

【地域経済振興】
 中小企業診断士にとって、地域経済の振興支援という面的な支援も重要と考えている。
例えば、商店街振興や地域特産品を扱う道の駅支援などである。個別企業の支援だけでなく、これらの地域経済の振興を地元の地方自治体や商工会議所・商工会と連携しながら取り組むことは、特に「滋賀県」という地域に根差した我々滋賀県中小企業診断士協会にとっては大切な地域における役割と考えている。
 このような地域経済振興の業務は、当該地域に居住し、自ら経済活動をこの地域で取り組んでいるものしか出来ないもの、しなければならない責務と考える。

【専門分野研究会】
 中小企業診断士が以上述べたような業務を行い、顧客である経営者や公的機関の満足を得るためには、色々の専門分野における実務ノウハウが要請されるところである。
 滋賀県中小企業診断士協会では、①企業組織活性化研究部会、②ものづくり研究部会、③知的資産経営研究部会、④事業再生支援研究部会、⑤利益ナビゲーター研究部会、⑥事業承継研究部会など、それぞれの専門分野ごとの勉強会を会員および賛助会員企業を中心にオープン形式で取り組んでいる。開催予定は、協会ホームページ*1で公開しており、どちら様でも自由に参加していただける内容となっている。添付写真は、最近の事業承継研究部会のワンショットであるが、皆様のご参加を期待したい。

*1: 一般社団法人滋賀県中小企業診断士協会 http://shiga-smeca.net/

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