Members Column メンバーズコラム

ゴミを拾う

萩原辰夫 (NTT西日本)  Vol.536

萩原辰夫

前回コラムを執筆した際は、KSNのメンバーとして迎え入れていただいた時でしたが、今回は世話人に推薦していただきその役目を担うタイミングで執筆の機会をいただきました。推薦およびご承認いただき、この場をお借りしてお礼申し上げます。
私自身の活動のテーマは「人と人をもつなぐネットワークエンジニア」です。所属組織の関係上「ICT」と書きたいところではありますが、技術がいくら発展しても、人と人のふれあいに勝るものはなく、アナログなつながりを大切にしていきたいと考えております。

【ごみを拾う】
もし、みなさんの目の前にゴミが落ちていたら、拾いますか?
おそらく、1000人中1人がかろうじて拾うくらいではないでしょうか。
そう言う私は拾わない側の人間です。
理由は、「今は急いでいる」「ゴミ袋がない」「近くにゴミ箱がない」「誰かが拾うだろう」などではないでしょうか。

その目の前のゴミは、風で飛んでいき川を流れ、そして海へ溜まる。一部のゴミは島へ堆積し一部のゴミは海底へ堆積します。プラスチック製品は、一説には数百年かかっても分解されことはないらしく、ペットボトルや発泡スチロール、ビニール袋等は劣化し、マイクロプラスチックになり、海を漂いつづけます。
分解されないプラスチックゴミは、海洋生物の体内に取り込まれ、消化しきれず胃袋をパンパンにして死んだり、細分化されたゴミを小魚が摂取し、それを大型魚が食べ、最終的に人間が食べるため、将来は健康被害なども出てくると言われています。
このような話は、ニュースや雑誌記事などで紹介されており、身近な環境問題として多くの人が認識していると思います。

話は戻りますが、こんな大変な状況が分かっているのに、やはり、目の前のゴミを拾わないのです。新型コロナウィルスの感染拡大で、当然のようにマスクはしますが、ゴミを拾わないのは、やはり自分の身に危険が迫っていると感じないからだと思います。
仮に、目の前のゴミがウィルスをまき散らす存在であれば、徹底してゴミを回収すると思いますが、目の前のゴミは何も危害を加えてくることがありませんので、放置してしまいます。

1年前までは、私は、ゴミをあえて拾うことはしなかったのですが、実はこっそりとゴミ拾いを始めました。これだけ聞けば、このコラムは「ゴミ拾いを始めました」という内容になってしまうのですが、これは、ゴミを拾うことだけが目的ではなく、「立ち止まって考える」ための手段としてもやっています。

週に2回程度、小さなゴミ袋とトングを用意し、通勤経路のゴミを拾います。3mおきに必ずゴミがあり、ゴミの大半はタバコの吸い殻です。これを立ち止まりながら拾っていると20分の道のりが40分程度かかります。ひどいときは、弁当殻や多量のビールの空き缶を放置しているのを見つけます。
この時の自分は、ゴミを拾う側の立場なので、身勝手に捨てられたごみを見るたびに腹が立ちますし、目の前のゴミを見て見ぬふりする通行人に白い目を向けます。ゴミを拾うことによって、「私はごみを拾ういい人間だ」という感情が先に立ち、ゴミを拾わない理由を考えるような後ろめたさがなくなります。
 次の日、今度はゴミを拾わない立場の人間に戻ります。そうすると、ごみを拾わない理由を考えながら歩いている自分がいます。「昨日拾ったからいいじゃないか」と思うのではなく、「結局拾わない側の人間にすぎない」と思うのです。そうすると、見て見ぬふりする通行人と何ら変わらないのです。

この時、気づいたのは、「人間は少し立場が変わっただけでも考え方や感情に影響を与えてしまう」ことです。そして、「少しの行動で立場は変わるのに、その少しの行動をなかなか変えることができない。」ということです。これは、ゴミを拾うことだけではなく、普段の行動にも言えることだと思います。まぁいいかと思うことはたくさんありますし、見て見ぬふりをすることもあると思いますが、少し行動を変えてみると何かが見えてくるかもしれません。

もし、みなさんの前に不都合なゴミが落ちていたら、ちょっと立ち止まって考えてみてはいいかがでしょうか。結果的に、目の前のゴミを拾わなかったとしても、立ち止まって考えることが、何かのヒントにつながるかもしれません。

最後に、
2020年12月19日-21日の4日間、愛媛県の伊方町で海ゴミ大清掃プロジェクトがあり参加する予定です。これは、瀬戸内海の島ゴミを未来の世代に引き継がないために、会社を設立してまで清掃活動しているE.Cオーシャンズが企画したイベントです。島ゴミの回収は危険を伴い、一般人が拾う困難なため特殊な清掃手段が必要です。E.Cオーシャンズの代表である岩田さんは、毎日のように船を出し、そのごみを回収し、処分場で処理されるまで責任もって対応されている方です。私は、この方の活動に心打たれ、イベント時だけですが活動に参加しています。冒頭に記載した、海ゴミ問題は、話題には上がるものの、いざ回収となると国や自治体組織が動いていないのが現状だそうです。
この記事をきっかけに、少しでも目を向けていただけると幸いです。活動結果は、私のFaceBookでも紹介したいと思いますので、ご興味がありましたら、覗いてみてください。

PAGE TOP