Members Column メンバーズコラム

「ととのう」を支えるイノベーションマネジャー®
福田 稔 ((一社)日本イノベーションマネジャー協会 代表理事) Vol.754
こんにちは。久々の投稿になります。この夏は「年金+10万円を稼ぐ創業塾」と題したシニア創業セミナーを広島で開講します。福山の渡辺幸三さんたちとのチャレンジです。8月23日㈯ 60代限定、30日㈯ 50代限定の新しい試みです。 https://www.port-cloud.jp/seminar/20250627-1/
いま私の主な活動は新潟市の開志専門職大学で実務家教員として学生のフレッシュな事業アイデアをアントレプレナーシップにつなげることと、主宰する(一社)日本イノベーションマネジャー協会で地域や会社でイノベーションが起こる環境を整える「イノベーションマネジャー®」を育成しています。
大学の教員はだいたい教育しながら自分の研究課題を持っています。私も実習や経営系の科目とともに、専門職大学の「実務家教員」に関する研究で科研費をいただきつつ、実習科目の教育方法やカリキュラム開発などをテーマにしています。東瀬先生はじめ新潟大学の先生方にご指導をいただいているところです。こちらの方は、またいろんな機会にご報告したいと思っています。
今回は主な活動の後段、「イノベーションの環境を整える」ことについて、お話したいと思います。
せっかく“整う”ということばが出てきたので、サウナ―の皆さんが発する“ととのう”と対比して、イノベーションを眺めてみたいと思います。
サウナー(サウナ愛好者)がおっしゃる「ととのう」は、「サウナ」→「水風呂」→「外気浴」のサイクルを数回繰り返した後に得られる、心身ともに深くリラックスした状態だと言われています。
では、ビジネス、イノベーションの面での「整う」はどんな状態か考えてみたいと思います。
「サウナ」→「水風呂」→「外気浴」のサイクルをビジネスになぞらえると、「レッドオーシャン」→「逆境」→「再生・調和」だと思います。(諸説あります!)
サウナで熱せられるのは、挑戦・緊張の場で、戦略実行・プロジェクト推進・心身の負荷で、高温でストレスがかかる状態です。さながら「目標に向かって坂を登る競争」、高温という生命の危機に曝され、従来の武器(商品サービス)で生き残りをかけます。
水風呂は逆境・冷静の場で、過酷な競争を経ての反省・リフレクション・クールダウン。過熱状態から急激に冷やされることは、環境激変の予期せぬ困難や不振、現実とのギャップをクールに見直す場面になります。これも冷温という生命の危機に曝される時間です。
そして待望の「外気浴」、統合・昇華の場、学び・回復、挑戦への準備がなされます。灼熱と厳寒を経た後の「整い」状態は、経営の再構築であり革新。直観力が高まり、新しい発想や戦略が生まれやすくなる。つまり一皮むけて、イノベーション創出のタイミングを迎えます。
サウナ―ならずともサウナに行くと、どこかに滞留していた血流が全身に行き渡り、呼吸は落ち着き、幸福さえ感じます。精神的にも雑念がなくなり、「無」のような感覚になり、不安や恐れが薄れます。集中力が増し、マインドフルネスといわれる状態が得られます。
経営者や責任世代の皆さんがこのような状況を得ると、イノベーションの機運が降りてきたり、湧いてきたりします。
私たちは数ある快適なサウナに身を浸して、「熱・冷・整」、「正・反・合」を経験させてもらいますが、そこには必ず温泉の「湯守」のような環境づくりのかげ働きがあります。私ども(一社)日本イノベーションマネジャー協会はそこに着目しました。
イノベーションはイノベーターが起こします。イノベーターの特長を簡単にまとめると、単なる“アイデアマン”ではなく、変化を現実のものにする推進役を担います。①変化が好きで維持よりも新しさに魅力を感じている。(飽きっぽい)②枠を超えようとする。「そもそも論」が大好きで、他部門と連携というか越境侵犯する。③やってみようの試作・試行重視で失敗に積極的な価値を見出す。(減点主義に弱い)④孤独でも進み、組織の“変態”になる覚悟がある。(KNSでは尊称)⑤現場発想が強く、実装力がある、などなど。みなさんも一人二人、顔を思い浮かべているかもしれません。あるいは自分のこと?といまさら気が付いた人もいるかもしれません。
イノベーター、組織の発展にこれほど大切な宝の人材はいません。でも「異端児」「やっかいな人」「空気を読まない人」、挙句の果てに「造反者」と見なされることも往々にしてあります。それが怖くて「私はイノベーターじゃないです!」の迷彩をまとう人もいます。
この組織の宝、成長のチャンスを作るイノベーターを守り、イノベーションの柱を立てる活躍の土壌を整えるのは誰か。その人こそ「イノベーションマネジャー®」なのです。
イノベーターは時に天与の才覚を発揮しますが、イノベーションマネジャー®は学びによって能力を獲得とすることができます。経営者や幹部である必要はありませんが、組織の成長とベクトルを合わせ、本来の自立と自律、アントレプレナーシップを自他の心にともす必要があると考えています。
そのようなイノベーションマネジャー®が整えた土壌で、イノベーターが丹精込めたイノベーションの花が咲きます。
私たちはもう、失われた○○年を嘆いている暇はありません。多様性の大切さを頭で知りながら、モノカルチャーの心地よさを享受してきた結末がいまの姿と心得て、提案の伴わない「イノベーションが足りない」論調を無視し、イノベーションを整えるときを迎えているのだと思います。
高温に遭い、冷水を浴びたからこその「整い」「統合」「昇華」、高まった直観力を駆使してイノベーションに向かいたいと思います。
あらためて、イノベーション創出環境を整えるイノベーションマネジャー®のかげ働きを応援いただければと思っています。この国のイノベーション創出の循環サイクルを再加速して、豊かに幸せにまいりましょう♪