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盛岡じゃじゃ麺

岩手・盛岡に暮らす意味

及川 隆 (盛岡市役所)  Vol.700

 2023年9月23日に神戸市で開催された第75回定例会in流通科学大学において「NYタイムズ紙に選ばれた盛岡市」と題しプレゼンさせていただきました。今回は、プレゼンで語り切れなかったアレコレをツラツラと書いてみたいと思います。

 2023年1月12日付け、アメリカ合衆国のニューヨークタイムズ紙(電子版)が発表した「2023年に行くべき52カ所」に、イギリス「ロンドン」に次いで、「盛岡市」が2番目に選ばれました。中心市街地に歴史的な建物と川や公園などの自然があり、まちを歩いて楽しめるところや、コーヒー店、わんこそばのほか、書店、ジャズ喫茶などの文化が根付くまちであることが評価されたとのことです。
 選定理由を一言でいうとこのような感じですが、一番の理由は、盛岡市を推薦したニューヨークタイムズ紙のライター クレイグ・モドさんの熱烈な「盛岡愛」だと言われています。「人混みなく歩いて回れる宝石的スポット」「大正時代に建てられた西洋と東洋の建築美が融合した建造物」「近代的なホテルと歴史を感じさせる旅館」「市内を蛇行して流れる川などの素材にあふれた街」などなど、盛岡市推薦の背景を綴ったニュースレターにその魅力が紹介されています。
<クレイグ・モドさんが、盛岡推薦の背景を綴ったニュースレター(岩手県ホームページ)>
https://www.pref.iwate.jp/sangyoukoyou/kankou/1059946/1061603.html

 さらに、モドさんは、「僕の関心事は、人々の暮らしの中にある。よい人生に必要なものは何か?いかにして何気ない日常の中に豊かさを見いだすか?という根本的な問いへの答えを探し続けているからだ。色んな人たちと話すことで、その答えが確固たるものになっていく。探す努力をすれば、答えはそこここに溢れている」「盛岡は、僕が街に求める基本的な要素を持っている。善良な人たちが、生き生きと暮らしているということだ」と紹介しています。

 岩手・盛岡の日常の風景、暮らしがこのように評価され、世界から注目されることとなったことに、岩手県民・盛岡市民の多くの人々が、驚きと戸惑いを感じずにはいられなかったと思います。また、このことを通じて、岩手・盛岡の良さ、魅力について改めて考え、気づかされるきっかけとなったのではないでしょうか。

 特にも私は、岩手・盛岡の「人々の暮らし」にモドさんが着目したことにハッとさせられました。そして「善良な人たちが生き生きと暮らしている」という言葉に、ある意味衝撃を受けました。今まで、そんな見方をしたことがなかった、気づきもしなかったことに対してです。

 確かに、盛岡では落とし物、忘れ物がちゃんと持ち主に戻ってくるという話をよく聞きますし、都会でよく見る暗号なのかアートなのかよくわからないスプレー落書きは盛岡にはほとんどないし、横断歩道を渡る小学生は停まった車にぴょこんとお辞儀をしてくれます。通勤途中にごみを拾って歩く方も散見しますし、神子田朝市や材木町よ市でのおばちゃんとの何気ないやりとりもほっこりとさせてくれます。

 食に関しても、私の大好物である「盛岡冷麺」「盛岡じゃじゃ麺(写真)」も盛岡駅をはじめ多くの飲食店で気軽に食べることができますし、盛岡のクラフトビール「ベアレンビール」もいつでも飲むことができます。黒ビールの「シュバルツ」は国際ビールコンクールで世界1位に選ばれました。
 春には道の駅や産直にシドケやタラノメなどの山菜がこれでもかと並び、夏にはアウトドアでいわて短角牛と三陸のシーフードのバーベキュー、秋には盛岡りんご、芋の子やきのこ汁と、なにより「銀河のしずく」の新米、冬にはドンコや牡蠣など具沢山のお鍋と地酒の熱燗などなど、体重増加の要素が年中無休でてんこ盛りです。

 これって、当たり前のことではなくて、実はとっても幸せなことじゃないのか?

 とかく人々は、「ないもの」に着目しがちです。特に地方の若者の多くが地元には「なにもない」と感じ、「なんでもある」都会に憧れ、東京をはじめとする大都市に出て行ってしまいます。このような一人ひとりの行動が社会動態化し、東京一極集中と地方衰退の一因ともなっています。

 モドさんの指摘は、日常の中に普通に「あるもの」を私たちに「再発見」させ、その価値を「再評価」させてくれたと思います。同時に、これは岩手・盛岡に限らず、誰しもが持っている「ふるさと」「郷土」に対する共通する思い、まさに「地元愛」そのものではないかと感じるのです。

 盛岡市職員のひとりとして、また、盛岡市民のひとりとして、「地元をモット知ろう」「地元をモット元気にしよう」を「モド」もとい「モットー」に(しつこい*^-^*;)、「ローカルファースト」の精神で、これからも岩手・盛岡の暮らしを大切にしていきたいと思います。

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