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津軽三十三観音霊場を巡って

岡村正彦 (青森県商工労働部地域産業課)  Vol.295

岡村正彦

みなさま、こんにちは!青森県庁で商工労働部地域産業課の岡村正彦と申します。
折角の機会を頂戴しましたので、地元青森に根ざした情報発信をしたいと考え、今回は、昨年、巡った「津軽三十三観音霊場」を、特に地域振興、地域資源の視点からご紹介したいと思います。
実際、当方は青森に戻って四半世紀となりますが、これまで「津軽三十三観音霊場」については、全く知りませんでした。コトのおこりは、地元で懇意させていただいている大先輩の社長との飲み会二次会での何気ない会話から。たまたま夜のマチで出逢うなど幾つかの偶然が重なり合って、今回の津軽三十三観音霊場巡りがスタートしたわけです。

まずは津軽三十三観音霊場の概要と起源に触れてみたいと思います。観音霊場は、地図で言うと、青森県の左側、津軽地方の12市町村に所在しており、行程とすれば、500kmを超える距離となります。弘前市にある第一番の久渡寺(くどじ)からはじまり津軽半島を日本海、津軽海峡、陸奥湾に沿って巡り、最後の第三十三番は、弘前市に戻り、普門院で、結願を迎えるということになります。車で巡った場合、三泊四日、徒歩の場合、十四泊十五日で巡るコースとして設定されています。ちなみに、私は車で巡り、7月と10月に、一泊二日にて2回巡って結願を行いました。

起源は、平幡良雄氏の著作「津軽観音巡礼」によると、江戸時代の承応年間(1652-55年)に、津軽藩でも当時大流行した「西国三十三所」に影響を受け、おびただしい巡礼者が西国を目指したそうです。この中には強い信仰心から巡拝の各霊場のお砂をいただき、故郷へ奉持し、近隣の寺やお堂に納めたようであり、津軽の観音霊場は、こうした人々の信仰から生み出されたようです。このような観音霊場の中から、三十三箇所が選ばれ、「津軽三十三観音霊場」となっているわけですが、実際、民衆が津軽の霊場三十三箇所を選んだのか、藩庁がこれを制定したのかは不明なようです。

ただ津軽藩としては、遠い西国を巡礼するためには往復100日余りの行程となるため、「他国」へ労働力と旅費、宿泊ほか消費活動が領外へ流出することとなり、これを抑制するため、領内に「霊場」を定め、領内霊場巡拝を奨励していたようです。これは域内で、お金が落ちる仕組みを構築したものであり、まさに現代でも行われるような地域の活性化に向けた策の一環です。なんとなく当時の津軽藩の施策を担っていた人たちの思惑、地元の観音霊場の関係者の思惑が透けて見え、とても人間くさい面を感じるところです。

実際に巡ってみた感想ですが、本来の巡礼の目的のほかに、特に地域の歴史に知り、地域の名所、史跡を訪れ、温泉、食を愉しみ、そして、人に巡り逢い、これまでに触れたことのないたくさんの地域の資源を知り学ぶ旅となりました。
個人的に、津軽三十三観音霊場巡礼にあたり、見所のポイントを3つ挙げるとすれば、第一番久渡寺(弘前市)をはじめとする種類に飛んだ「参道」、五番十越内巌鬼山観音堂(弘前市)の大杉をはじめとする「巨木」、そして、第十番円覚寺(深浦町)から臨む夕日が沈む日本海をはじめとする、津軽海峡、陸奥湾の3つ全く異なる海の表情です。

特に、自分の中では、「巨木」との出逢いがとても印象的でした。それぞれに偉容、威風、厳威、畏懼など言葉を用いたくなるような強烈な個性をアピールしている、樹齢数百年のご神木、巨木。それが、凛とした空気感が漂う参道や境内周辺に、鎮座しているわけです。自然と数百年にわたり人々の営みを見守り存在に、敬意、ありがたさを憶えます。そして、側に佇み、また、触れることで、この身が浄化されたような、そんな気持ちにもさせてくれるものでした。

これまで出逢ってきた地域の元気に取り組むエキスパートの方々皆が同じことを言われます。地域の歴史への理解を深めなさいと。そうすれば更に地域のことが好きにある。地域の強みが見えてくる。まさに今回は、その言葉の意味を実感した旅となりました。また、自らの地域の素晴らしさ感じ理解しているからこそ、他の地域の素晴らしさをも理解できていくものではないかとの想いを更に強くしました。ある意味、この津軽三十三観音霊場を設定した先人の意図に、ずばりはまってしまったわけです。

機会がありましたら、是非皆様にも、津軽三十三観音霊場をはじめ青森の地域資源を、リアルで体験していただき、お互いの地域の素晴らしさ談義がしたいものです。もしかしたら御利益があるかもしれませんよ。青森へのお越し、お待ちしております!

写真は、第一番久渡寺の参道、第三番求聞寺の大杉、第十番円覚寺近隣からの日本海の夕日、第八番日照田観音の大銀杏、第五番十腰内観音堂(巌鬼山神社)の大杉です。

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