Members Column メンバーズコラム
親しき仲にもレベルあり
宮田聡 (C'est la vie セラヴィ) Vol.248
私は、写植会社を経験してデザイン業界に入り30年近くになりま
す。今年の1月、独立して23年目になりました。グラフイックデザイ
ン事務所“セラヴィ”の宮田です。
昨年、私がまだ独立する前からお付き合いがある会社の社史「グル
ープ百年の歩み」を制作しました。
お付き合いが始まったのは、その会社の現社長が部長だったとき、
ちょうどプロモーション事業部を立ち上げられ、部下1名を含め2名で
スタートされた頃です。イベントやタイアップ企画など、新しい分野
にチャレンジされて、戦略を繰り広げられた時期、あらゆる案件を依
頼していただきました。ここで私が言うのもおこがましいかもしれま
せんが、ある意味、苦楽を共にした「戦友」としての戦いの日々だっ
たといっても過言ではないかと思っています。
部長が、事業の拡大を目指し仕事を確保するために、時には頭を
下げて営業先へと向かい、築き上げ獲得した数々の事柄を目のあた
りにするたびに強く心を動かされました。そして私も29歳で独立す
ることになり、経験したことやカラダで覚えてきたことを表現する
ために、勢いやフットワークも必要でしたし仕事漬けの毎日も苦に
はなりませんでした。部長の仕事に対する姿勢やストイックさを知
っていくうちに、多くの刺激と共に原動力にもなったのか、私の先
立つ思いは、制作予算ありきという基準ではなく、熱意の伝わった
ものを受けたからには、何がなんでもこのプロジェクトに誠意を持
ち応えたい、連日の徹夜作業も乗り切れる…という気持ちのほうが
自然と優先順位になりました。そんな思いが伝わったのか、「戦友」
としての括りとは別に、親しくコミニュケーションもしてこれまし
た。いつの日か真っ向から意見をぶつけたり、腹を割って話すよう
になり、時を経ても変わらず、確固たる信頼関係へと続きました。
その後、部長の事業部の業績はどんどん上がり続け社員数も増え
たことで、直接、一緒に仕事をすることは減りましたが、今から
5年前、部長から社長に就任された際、会社案内を依頼されました。
しかし、久しぶりに一緒に仕事に関わっていくという時に、何か底
知れない悔しさと焦燥感に駆られました。こちらのイメージをはる
かに超えた視野を社長が持っておられたことで、自分もまだまだ現
状に留まらずレベルを上げなければ、「このままでは置いていかれ
る…」、お互いの置かれてる立場や分野は違えども、話しを共有で
きなくなるのではないかという気持ちが沸き上がり、それが次への
後押しになったことを覚えています。
そして、昨年末に完成した社史、会長のエピソードが中心になっ
たものなので、当初は年史の専門業者に依頼予定されてましたが、
社長が全面的にハンドリングするということになり、私に連絡をく
ださいました。今回もその過程で得たものは大きかったです。制作
する中、良い意味でのプレッシャーは、緊張感を持ちながらも息の
合う感覚でした。年数経て苦労を共にしたことで成し遂げられる物
事について、積み重なりの深さを改めて実感しました。
人ありきで生まれる信頼関係を大切にしたいという考えは、独立
当初より変わっておらず、自分自身へのモチベーションへと繋がっ
てきたと思っています。今後も小さい事務所ながらも個性を発揮し
て頑張っていきます。
facebookに作品など、事務所のことを知ってもらえるものを掲載
していってますので、ぜひ一度、ご覧ください。
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