Members Column メンバーズコラム

「笑いで紡がれたン十年 まだまだ広がる笑い学」

堀 登志子 (オフィスはなはな 日本笑い学会)  Vol.814

 毎年夏に開催する日本笑い学会の大会。今年は9月26日27日。京都は立命館大学大宮キャンパスで第33回を開催する。
 笑い学の研究発表を主体に、記念講演、腕試しテスト「笑い学選手権」、テーマ別参加型分科会「笑い学の広場」とプログラムは盛りだくさん。今年はなんと高校生のポスター発表も加わった。私はこの中の「笑い学の広場」の主任を担当している。

 テーマ別参加型分科会「笑い学の広場」は、2024年から始まった、会場に来た人全員で笑い学を深めようという分科会。そもそも、市民の生活の中で紡ぐ笑いの情報や気づきと、学術研究者の研究を重ねて、常に変化していく「笑い学」を極めていこうと立ち上がった笑い学会。大会に参加する人は、立場や年齢に関わらず「言いたいことがあるはず」と笑い学の広場が始まった。

 今年は、10のテーマをもとに、それぞれについた進行役が「そこにいる各々が必ず一言は発言してもらうこと」を目標に、13時15分から最後の分科会別報告を含めて15時半まで、話し合ってもらう。
 
 10のテーマのひとつ「笑顔になれるまちづくり」に、KNSの世話人であられる流通科学大学の長坂泰之先生に進行役をお願いすることとなった。学者の多い日本笑い学会。「健康」「加齢防止」を経て「まちづくり」に興味があるらしく、ぜひこのテーマで分科会をとの声が上がった。そこで私が白羽の矢を立てたのが長坂先生。きっと当日は笑い声に溢れた楽しい空気が流れることと期待している。
 市民参加型。ぜひこのコラムを読んでくださったみなさんにも参加してほしい。KNSとは違ってお酒は出ないけど、「笑い」をキーワードに集まる面々、interestingな場となるはずだ。
https://www.nwgk.jp/event/eventTaikai.html

 「来てください」圧満々の書き出しになってしまったが、私は、なんとこの日本笑い学会で事務局長を務めている。学者でもなければ、ひとつのことを突き詰めて考える頭もない私が、そもそもなぜこの学会に入り、事務局長まで務めるようになったのか。。。

 この学会の創始者、関西大学名誉教授の井上宏先生は、私の大学時代のゼミの恩師。ン0年前に先生に出会い、それからずっと気にかけてもらって「元気か?どうしてる?」とお声をかけてくださり、今年まで続いてきたゼミ会でもお目にかかってきたのがきっかけ。井上先生には、所属していた落語研究部の顧問も引き受けていただいた。
 今の私の名刺には、日本笑い学会事務局長・笑いプロジェクト、ユーモアコンサルタントと、笑いの文字が並んでいる。こんな私だが、「笑い」が大好きな女子では決してなかった。戦後を乗り越えてきた福井出身の両親。決して家庭環境に恵まれていたとは言えない中、子ども2人を育て一軒家を持つまでになった。ファミリーヒストリーで取り上げてもらいたいくらいだ。(結婚前のジェーン台風の夜、父は母の実家の被害を防いで夜を過ごし、翌朝帰宅したら下宿の壁が飛んでいたらしい)。この両親がとても真面目で、特にテレビのお笑い番組を毛嫌いしていた。「吉本新喜劇」やドリフの「8時だよ全員集合」なんてみたこともなかった。ただ落語は別らしく、家族で米朝の落語をレコードで聴いていた。こう書くと、まるでサザエさんの世界だ。
 こんな私がなぜ大学生になって落語研究部に所属したのか。入学してまだ日も浅い頃、正門を潜って大食堂に行ってみた(私の入った社会学部は正門の外にあったのだ)。当時の関西大学は校舎の間に築山があり、芝生がしげり、大きな木々がサワサワと葉をゆらしていた。芝生から何やら声が聞こえてくる。落語を聴かせてくれるらしい。ちゃぶ台に座布団置いた高座。芝生にござを敷いた観客席に座ってみる。当時三年生だった関大亭笑鬼が落語を一席。ネタは狸賽。笑った!とにかくおもしろかった。なぜかだんだん大きくなる笑い声に押されるように笑った。終わって振り向くと立ち見も出るほどの大人数。「人を集めるのは一重の人垣と笑い声」を学んだ瞬間だった。その足で部室の扉を叩き入部。さぞかし楽しい毎日が待っているのだろうと思っていたら、まるで丁稚のような一年生・板挟みの二年生・責任重大な三年生と、ご隠居さんになる四年生まで軍隊のような場に身を置くこととなったのだが、それはまた別の話で。
 四年生まで勤め上げた落語研究部。辛いことも多かったけど、ここで社会を学んだことも確か。さらに年に何度か開催した寄席で、「人を笑わせることは楽しい」と快楽の体感をしてしまった。人は笑えば心が開く、空気が変わる、人が寄る。人が寄れば、経済が動き、人権関係が生まれる。「笑い」の力は小さくて、空気のように軽いものだけど、色々なことをプラスに動かす可能性は大きい。

 入部したクラブがきっかけで開かれた「笑いの可能性」への興味。卒業してからの私の背中を押し繋ぎ止めてくださったのが井上宏先生。ご自身が立ち上げた日本笑い学会にも誘ってくださった。さらにこの学会で活躍し理事になっていた大学時代の落語研究部の先輩が、私を理事に推薦してくださり、なんと事務局長にまでなってしまったというお話。

 笑いの縁は長持ちだ。ともに笑い合った記憶は心地よいものとして残る。辛かったことも、最後に笑って楽しい締めくくりになれば良い思い出として残る。まさに古人の「笑って水に流そう」「終わりよければ全てよし」だ。

 9月27日の大会二日目。ぜひともに笑って学問を深める「笑い学の広場—笑顔になれるまちづくり 進行役:長坂泰之」で、まちづくりでの笑いの可能性を深めてほしい。もちろん違う面から攻めるぞも大歓迎。なんせ選べるテーマが10もあるのだから。

 笑う門には福来る 笑ってまちおこし まだまだ広がる笑い学

 

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