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インキュベーションマネジャー・コーディネーターの本を書いています

吉田 雅彦 (実践女子大学・元 経済産業省)  Vol.708

 2022年11月「令和4年第1回INS起業化研究会in岩手大学」で、「佐藤利雄さんとインキュベーションマネジャー・コーディネーターの本を書きます! 『死の谷のシェルパ』というタイトルです!」と宣言してから、約1年。何も進みませんでした。

 佐藤さんのパワポや講演録があったので、もう少し簡単に書けると思っていたら。何の何の。ピタリと筆が止まって進みません。全体構想も浮かんでこない、見えてこない。という状態が1年続いたので、何で「書けると思ってしまったのだろうか?」とすら思いました。

 困っていたところに思い出したのが、関満博先生(一橋大名誉教授)が言っていた「自分が本を書くときは、調べ物をして年表をまず作る」でした。国会図書館に行って、佐藤さんの論文、講演録、取材記事などをコピーして、コツコツと年表を作りました。それでやっと進み始めたのが2023年暮れでした。

 インキュベーションマネジャー・コーディネーターを取材してわかったことはたくさんありますが、ひとつは、KNSには、インキュベーションマネジャー・コーディネーターが多くいるということです。← 今ごろ気づいたのか!

インキュベーションマネジャー・コーディネーターは、スタートアップ企業や、経営革新を起こしたい中小企業に対して、必要な人材を紹介することを求められるので、信頼できる人脈を、まずは作ることが必要です。KNSはその場として重要であり、そういう人たちが来るのでますます重要度が増すという循環なのでしょう。

 2024年5月【東北支部】ミニ井戸端会議「INS前夜祭」では、当初考えていた書名『死の谷のシェルパ』が、さんざんの悪評でした。「古い!」「若い人はそんな言葉、知らないよ!」「誰に読ませたいの!」とボコボコに“ダメだし”されました。ので、変更します。良い仲間を持てて幸せです。良いことも悪いことも、ちゃんと言ってもらえるのは、本当にありがたいことです。 ← 信頼関係かな

 

注:「死の谷」は起業のたいへんさを示す比喩。「シェルパ」はヒマラヤの登山家と一緒に登って支援する現地の専門家。

 

 もう一つわかったこと(独断です)は、なぜ、岩手にINSができ、花巻市起業化支援センターができ、佐藤利雄さんというインキュベーションマネジャー・コーディネーターが生まれたのかです。

 アテルイと坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)、安部貞任・宗任兄弟(あべのさだとう・むねとう)と源頼義(みなもとのよりよし)・義家(よしいえ)父子、平泉の奥州藤原氏と源頼朝。力を発揮しようとすると抑圧されるという歴史のバネが、岩手には蓄積されていて、明治期には宮沢賢治などの多くの偉人や、多くの首相を生み出しました。そのような思いと空気感の延長に、INS、花巻市起業化支援センター、佐藤利雄さんがあると感じました。今の岩手は豊かで美しいところになったので、歴史上の人物たちも喜んでいるのではないかと思います。 ← 勝手な感想です

 KNSとINSが仲良くしているのも感慨深いです。

 スタートアップ企業を支援したり、中小企業の経営革新を支援したりすることは、私の古巣の経済産業省の重要テーマです。反省をこめて言いますと、経営学を若い時に勉強していたらなと思います。米国をはじめとする世界の「経営をどうしたら良いか」という知恵が詰まっているわけですから。私が経営学を学んだのは、2020年、59歳からなので。現役が終わってからなので。遅すぎです。三谷宏治さんの『新しい経営学』、入山章栄さんの『世界標準の経営理論』が衝撃でした。

 商工行政の“周辺”の人が集まると「行政の人が3年で異動していくので・・・」という愚痴が、ときどき聴かれます。KNS・INSには、この難題に勝手にチャレンジし、戦っている“変態”さんたちがたくさんいます。大事なこと、すばらしいことです。“変態”さんたちには、地域への貢献度が大きい人が多くいるように思います。

 インキュベーションマネジャー・コーディネーターの話しに戻りますが、幸いなことに、起業したり、経営革新をしたりしようとする人は今でも大勢います。インキュベーションマネジャー・コーディネーターに生きがいを感じている人も大勢います。

応援し続けたいです。

追伸 本の執筆は、コラム寄稿の参加者が少しずつ増えながら、ゆっくりと進んでいます。

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