Members Column メンバーズコラム

「外の人」から「中の人」へ!

瀬戸口 恵美子 (公益財団法人 太平洋人材交流センター(PREX))  Vol.729

皆様、公益財団法人 太平洋人材交流センター(PREX)の瀬戸口です。
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

前回のコラムを書かせていただいたのは2019年1月だったのですが、この6年間で世界は大きく変化しました。

中でも戦争の始まりは、とても衝撃的なことでした。
前回のコラムでもご紹介した通り、私の仕事は、途上国のより良い発展に必要な人材の育成や、研修事業を通じた国際的な人同士の交流を進めることです。
そして、最終的に目指しているゴールは、国家・地域間での格差がなくなって、誰もが安心して暮らせる社会や平和な世界を作ること、だと思ってやってきました。
ですから、21世紀になっても紛争がなくならないばかりか、戦争が始まってしまう、それを目の当たりにさせられたことは衝撃的で、どれほど我々は無力なのだろうか、と考えさせられました。

私が34年間のPREXでの仕事を通じて個人的に意義深かったと思うのは、世界各地の方々と知り合い、その皆さんを通じて、それぞれの国に想いを馳せることができるようになったことだと思います。
ロシアやウクライナ、シリアのことなど、ニュースで情報が流れるたびに、自分自身が関わりのある人々の顔が思い浮かび、無事であってほしい、そして戦争状態が一日も早く終結しみんなが笑える平和な時間を過ごしてほしい、と祈るような気持ちになります。
相手の方もきっと同じで、実際に日本や関西を訪ね、空気感や人々に触れ、その中で専門的に学びを深めると同時に、日本の中に「知り合い」ができるということは、それぞれの人生に何等かのインパクトを及ぼしているだろう、と実感しています。

「無関心」を減らし、世界での出来事を自分事として感じる人が増えることこそ、平和にとってはとても大事なことだと思います。
ですから、世界中にお互いに顔が浮かぶ関係性が少しでも広がること、そのための場を作ること、そして繋がり続けることの価値を改めて実感していますし、人生を通してそれは続いていくだろうと思います。

話は変わりますが、私はもう少ししたら鹿児島県垂水(たるみず)市に拠点を移そうと考えています。

垂水市というのは、鹿児島県南部大隅半島にある人口1万3千人ほどの町です。
桜島は大隅半島に少しだけ接しているのですが、その付け根辺りにあります。
垂水の自慢は、桜島と錦江湾の見える景観、そして身近にある温泉だと思います。
(他にも、カンパチやブリなどのお魚、甘くて止められないサツマイモなどの農作物、森伊蔵をはじめとした焼酎、飲む温泉水などいろいろあります!)
ここには夫の実家があるのですが、初めて訪ねた時、景観はもちろん、目の前の海で釣れる魚を朝から味噌汁に入れて食べ、週末には天然温泉かけ流しの銭湯に浸かり、自分の畑で収穫した新鮮な野菜を頂く義父母の生活に感動し、垂水が大好きになりました。
そんな垂水は、他の地方と同様、高齢化が激しく、訪れる度に空き家や空き地が増えています。このままではこの素敵な町がなくなるのではないか、そうなる前にもっといろんな人に知ってもらいたい、という思いに駆られるようになりました。
また、人手不足解消のため、来日し就労する外国人も増えており、地域の人々との相互理解や関係構築も課題だと知りました。

そこで、私自身が拠点を移し、関西や海外と繋げること、また外国人の皆さんと地域の方々との相互理解促進など、これまでの経験を活かして貢献してみたいと思うようになりました。

地元の皆さんにとっては当たり前のことが、私から見ればとても魅力的な財産です。それを推していきたい、と思っています。

また話が変わるのですが、昨年11月に関西や北陸の地域産業振興をテーマに中央アジア4カ国の行政官が参加する研修プログラムを担当しました。(「産業クラスター・アプローチによる地域産業振興研修」)。
地域ごとの産業にはそれぞれ地域の特性やそれに基づくリソースが不可欠ですが、その基盤にあるのは長い歴史や自然環境なのだと改めて知ることができました。例えば、北陸地域で繊維産業が盛んな背景には冬場の湿度も関係しています。
日本で一番降雨日数が多いのは金沢市だそうです。また「冬場はずっと曇りや雨、雷なんですよ」と地元の皆さんからも聞きました。
気候などの自然環境は、地形や土壌を育み、産業や人々の生活もそれに合わせて発展している、ということは少し考えれば当然なのですが、これまであまり深く理解していませんでした。
小さな国土の日本であっても、地形や自然環境が同じところは一つとしてありません。だとしたら、全く同じように産業発展をしてきた地域はないはずです。
ということは、それぞれの地域ごとに他との違いがあり、それをもっと大事に守りながら強みにしていければ、地方の小さな市であってもきっと魅力を発信できるはずだと思います。
久しぶりに担当した研修を通じてまたさらに垂水市に深く関わることが楽しみになっています。

これまでは「時々やってくる外の人」として関わっていた地域ですが、近い将来「住んでいる中の人」として、でも外との繋がりも取り込みながら、自分らしい関わり方で貢献していきたいと思っています。
地域の魅力を再発見でき、外国の方も含めたお互いに顔が浮かぶ関係性を広げることのできる場で、地域の人同士、また地域の外の人とも繋がり続ける価値を垂水で生み出したいと思います。

そして、KNSの皆さんを通じて、大隅半島の小さな町の大きな魅力を伝えていけたら嬉しいです。

皆さん、これからもよろしくお願いいたします。
ぜひ垂水市にお越しください!

垂水市の魅力はこちらで紹介されています。
 https://www.city.tarumizu.lg.jp/hisho/koi/miryoku/index.html

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