Activity Report 活動報告

オープン・サイエンス研究会Vol.1 探究学習とアントレプレナーシップ教育

 KNSの新たな研究会として「オープン・サイエンス研究会」を立ち上げ、その第1弾として、外部から話題提供者をお招きして、「探求学習とアントレプレナーシップ教育」を考える機会を設けることにいたしました。このオープン・サイエンス研究会は、KNSの有志で続けてきた「サイエンスフェアin兵庫」への参加・出展が10年を越えるのを機に、立ち上げるもので、サイエンスやテクノロジー、あるいはそれらから生み出されたものと、人や社会の活動との接点について、みなさんと一緒に、面白そうなところを探ったり、体験していくところから始めて、いろいろと発展させていければ、と考えています。
 そして、研究会の第一回目として、神戸大学の蛯名邦禎さんと鶴田宏樹さんから、「探求学習とアントレプレナーシップ教育」をテーマに話題提供をいただきました。このテーマを取り上げたきっかけは、KNS有志が10年に亘って参加してきた「サイエンスフェアin兵庫」にあります。科学技術人材を育成することを目的に、高校生と大学・企業・研究機関等の交流を図るイベントで、毎回1500人以上の高校生が参加するのですが、その中に、どういうわけか小学生や中学生が混じっていて、かつKNSメンバーの話を真面目に聞き、質問までしてくるのです。そこで、神戸大学で「神戸みらい博士育成道場」という小・中学生の探求学習を支援する取り組みがあったな、と思い出したという次第です。
 当日は、この「神戸みらい博士育成道場」の取組みを蛯名邦禎さんにご紹介いただくとともに、アントレプレナーシップ教育について鶴田さんにお話しいただきました。

 蛯名邦禎さんのお話は、まず「科学者とはどういう人のことだと思いますか」という問いかけから始まりました。好奇⼼、疑問をつき詰める、オタク、役に⽴つかどうかわからないけど何か発⾒する、⾃分な好きなものを黙々と⾏う、といった思い思いの答えを皆から引き出したところで、子供ってそうじゃない?、じゃあ子供は科学者かもしれないね、と引き取ります。このうち、好奇⼼を掻き⽴てるという部分を重視しながらも、探究活動を進め方について話を進め、神戸大学の具体的な取り組み「ROOTプログラム(高校生の探究活動の支援)」「神⼾みらい博⼠育成道場(小中学生の探究活動の支援)」を紹介いただきました。(でも、探究活動で最も重要な「問いを立てる」という部分の出発点にはやはり好奇心があるのですよね。)お話はさらに「探究学習」の必修化への危惧や指導の難しさ、そして人材育成のシステムやビジョンにまで及んだところで鶴田宏樹さんにバトンタッチ。

 鶴田宏樹さんのお話は、神戸大学のV.school(バリュースクール)の紹介から始まります。大学に蓄積されているいろいろな知識を混ぜ合わせるような場というイメージのようです。そのために学生にはいろいろな体験ができたり、価値を生み出すための視点や方法論を学んだりできるわけですが、基本的には単位には結びつかない授業なのだそうです。にもかかわらず200名の学生が登録しているということで、やはり自らの視点を持って考えるということが面白いのだろうなと思うのと同時に、「コスパ」「タイパ」に駆り立てられて、役に立たないものを切り捨てていく今どきの・・・という私自身の若者像が崩されて面白かったです。また、全体を通して、アントレプレナーシップ教育というのは、必ずしも起業家を育成するという意味ではなくて、学問の深堀を進めていく中で、結果としてスタートアップの創出にも結び付くこともあると捉えているお話で、非常に腑に落ちるものでした。

 というわけで、終了後の交流会も沢山の方々に参加いただき、遅くまで大いに盛り上がりました。それにしても「面白かった」「楽しかった」という声が多く、非常に嬉しい思いができた会となりました。

■日 時 : 2024年3月26日(火)
 開 会:19:00(受付開始:18:45)
 会 議:19:00から21:00まで(話題提供、フリーディスカッション)
 交流会:21:15頃から

■場 所 : ナレッジサロン プロジェクトルームG/H
       (大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル7F)

■テーマ 「探究学習とアントレプレナーシップ教育」

■話題提供者 
・蛯名邦禎(えびな くによし)
 神戸大学 未来人材センター学術研究員、神戸大学名誉教授
 研究分野:理論物理学、数理生物学、環境科学、科学教育
・鶴田宏樹(つるた ひろき)
 神戸大学 価値創発部門長/V.School 准教授
 研究分野:価値創造学/知の構造化/生物化学

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