Activity Report 活動報告

オープン・サイエンス研究会 Vol.6 エストニアとの連携によるアントレプレナーシップの育成から、 過疎地域の課題解決を目指す宇陀市の取組み

 どういうわけか、オープン・サイエンス研究会ではアントレプレナーシップ教育を取り上げる機会が多いのですが、今回は、KNSメンバーである甲賀晶子さん@宇陀市に「エストニアとの連携によるアントレプレナーシップの育成から、過疎地域の課題解決を目指す宇陀市の取組み」と題してお話いただきました。

 これまたどういうわけか、人口2万7千人の宇陀市が、どういうわけか北ヨーロッパ・バルト三国のエストニアと教育を軸とした交流を進めていて、小さな自治体による国際交流の取り組みとしても大いに注目したい事例です。

 当初は「1時間以上のお時間をいただけるのですね!喋れるかな笑」などとおっしゃっていた甲賀さんでしたが、案の定、当日は1時間45分をほぼしゃべり倒しましたね。(笑)

 その内容を、星乃さんが書き留めました。すでにKNSの全体メールで発信されていますが、杉浦が若干加筆して下記に再掲させていただくことで報告といたします。

        記

KNSの皆さん

21日(金)に開催されたオープンサイエンス研究会で発表された宇陀市の甲賀さんの講演が素晴らしかったので講演メモを作成しました。

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23日の朝、甲賀さんから日経動画が送られてきました。

【先ずは日経動画の文字起こし】

https://www.nikkei.com/video/6344720357112/

宇陀市は人口2万7千人。4町村が合併した2006年から1万人以上が減少

人口減少に歯止めをかけようと宇陀市は新たな事業を立ち上げた

 

宇陀市 金剛一智市長

エストニアに高等教育のアカデミーをつくる

エストニアの企業や大学と連携し、2025年9月に留学プログラムを開設

宇陀市によると、自治体が海外に留学プログラムを設けるのは全国初

 

バルト三国のエストニアは、IT先進国として知られる。

宇陀市はエストニアのクレボン社などと協定を結び、3年間でロボット工学の専門家を育成する

クレボン社は、自動運転技術などを開発するベンチャー企業

エストニアの大学と連携し人材育成の学校を運営する

 

2023年7月に宇陀市の中学生がエストニアに短期留学し、交流を深めた

留学プログラムでは、民間企業などと資金を出し合い、毎年20人の留学生を派遣する方針

 

留学プログラムの狙いについて、宇陀市長に話を聞いた。

エストニアは世界が憧れるIT国家だが、アントレープレナーシップ(起業家精神)教育に力を入れて、人材育成について魅力的な取り組みをしている。

我々は過疎地域の小さな町、人口減少、少子高齢化という大変厳しい状況にあります

宇陀でそういう素晴らしい教育ができるとなれば

宇陀で子供を育てたい、そういった形のまちづくりが進むのではないかと思いました。

留学した若者が宇陀に戻ってきて宇陀で活躍して欲しいという思いがあります。

活躍する場を宇陀につくりたい

宇陀市にクレボンの事業所を誘致したいと考えています

IT先進国との連携で過疎地域が活性化するか注目されている

 

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【甲賀さんの講演メモ】

『奈良県宇陀市がエストニアと教育を軸に連携、「覚悟」を持って挑む理由!』がタイトルでしたが、私の頭の中は?が一杯でした。

  • 何故、宇陀市とエストニアが連携?
  • 何故、教育?
  • ここでアントレプレナーシップって何?
  • エストニアが電子政府?

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宇陀市は

  • 無機水銀が取れていた町。その土地でとれる草や動物などが不老長寿の薬として活用されていた。一番古い私設の薬草園がある町。薬草の町
  • 2022年に全国に先駆けてオーガニックビレッジ宣言するなど、有機農業推進している町
  • ロート製薬の農業法人や類塾が経営する「類農業」が応援してくれている(ツムラやロート製薬の創業者は宇陀出身)
  • 地方では交通が課題であることからライドシェア、ドローンの導入に取り組むほか、移動診療車、宇陀けあネットなど、新しい試みを実践

 

甲賀さんと宇陀市の関わり

  • 奈良県庁の技師として最初に配属されたのが大宇陀土木事務所。そのときに手掛けた山上公園が今やインバウンド客に注目され、収支も改善。
  • 宇陀市に関わる法人は多かったが(有機農業と教育を掛け合わせる取り組みに賛同するなど)、民間が行政と組むのはマイナスイメージが強かった。そこで、赴任後3か月で「公民連携まちづくりプラットフォーム」を立ち上げたが、今や75団体が参加

 

甲賀さんがエストニアを知ったのは2年ほど前で、公民連携まちづくりプラットフォームに参加しているウェルアップという企業が2022年にエストニアツアー(ネクストイノベーション社が主催)に参加し、その感想を聞いたのが最初の関わり。

  • エストニアは、魔女の宅急便のモデルとなったともいわれる国で、旧ソ連から独立して30年ほど
  • 人口は奈良県と同程度、面積は九州と同程度
  • エストニアはオーガニックビレッジ、宇陀市も有機農業を推進しており、似ている
  • エストニアは、国民一人当たりのスタートアップ企業が欧州1多い国

と聞いたが、頭がいっぱいになったと言います。

 

何故、教育?

  • エストニアは1992年からアントレプレナーシップ教育を開始。1996年には国家カリキュラムの中核テーマとなった。
  • 3歳から5歳の子供にも「アントレプレナーシップ」を学ばせている
  • それは、おもちゃを使いながらキノコの名前を覚えたり(自然に触れること)、プログラミングを学ぶこと
  • プログラミングは年齢が早い方が良い
  • そのなかで英語も自然に学んでいる。公用語はエストニア語だが、若年層はすべて英語もOK
  • 公共施設の10%に芸術を取り入れなければならない。学校のすべてが子供達に役立つものと位置づけられ、例えば教室のドアには過去の偉人のイラストが描きこまれていたりする。

 

エストニアに行って現場を見て

  • 子供達の伝える力が素晴らしかった。校長が強調したのが「伝える力を着けさせる」教育。(結論を言ってから、理由を述べる力)
  • 視察したサレーマ高校に限らず、生徒はモジュール選択といって日本の大学の単位ように、授業を選んで受講する。校長の権限が強く、各校で特徴のある取り組みがされており、日本語だけでなく、日本文化を学ぶことを取り入れているところもある。
  • 行政も民間も子供達のことは子供達に聞こうという考え方が浸透しており、公園のデザインを子供達に考えさせたりしている。

 

エストニアがアントレプレナーシップ?

  • エストニアは、国民一人当たりのスタートアップ企業が欧州1多い国(再掲)
  • 自動運転が実用されている。アメリカなどが導入している
  • エストニアはSkypeなどの企業を輩出している
  • 起業家を作るだけではない、社会的に意義がある取り組みをされている

 

デジタル政府の先進都市

  • 日本のマイナンバーもエストニアをモデルにした
  • 日本はエストニアに学びにくるが、後に繋がっていない。日本人はお断りだ
  • 結婚、離婚などはデジタル化できないと言われていた
  • 離婚が一番、難しい。これもエストニアではできる段階にきている。(行政の95%がオンライン化できていると言われている。出生届も手書き部分は電話番号の一か所くらい(日本は名前を20数回書く)。行政への苦情もメールに書けという対応する。)

 

エストニアに学びたい! エストニアと繋がりたい!

  • 市長を視察に連れ出した(2023年4月)。
  • 「クレボンアカデミー」というエンジニア育成のための長期留学システムを持つ、自律走行配送ロボットの開発を進めるクレポン社と知り合った。
  • 2023年7月、宇陀市の中学生をエストニアに短期留学させ交流を深めた。「クレボンアカデミー」には、今までなかった英語のカリキュラムを作ってもらう。
  • 参加した10人から何人も生徒会長が出てきた。ある中学では参加した3人が3人とも生徒会長に立候補するなど、子供たちが確実に変わってきている。
  • エストニアから宇陀市の視察にきた(2023年10月)。
  • エストニアの企業も、日本の企業も前向きに取り組もうとしている。

 

100枚近いスライドで、ともかく熱く語る甲賀さんに圧倒された。

甲賀さんとは「奈良・町家の芸術祭はならぁと」を開催された頃だった。この事業も実行するまで大変な思いをされただろうが、今回の話は規模が数倍だ。

応援してくれる人も多いが、理解できない人も多いという。

 

再度、この講演は多くの人に聞いて欲しい内容だった。

宇陀市で「まち歩き+講演」が実現するかもしれない。

 

私も久しぶりに熱い思いを感じた。

そして甲賀さんにはこの野望を実現させて欲しいと思った。

 

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以前のKNSではこのような感想が共有されることが多かったので、

この話を早く伝えたいと思いMLに投稿させていただきます。

 

また私も、些少ですがクラウドファンディングに参加させていただきました。

https://fcf.furunavi.jp/Project/Detail?projectid=592

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参考までに、杉浦の方で時系列を整理しておきます。

・2022年   ウェルアップ社がエストニアツアーに参加。

・2023年1月 甲賀さんがウェルアップ社からツアーの感想を聞く。ツアー主催者が連携先を探索中と知る。

・2023年2月 宇陀市公民連携まちづくりプラットフォームのテーマの1つ「新たな学びの機会の創出」の具体策としてエストニアとの連携を組み込む。

・2023年4月 市長がエストニアを視察

・2023年7月 エストニアのサーレマー市と教育・観光・文化に関するMOU(基本合意書)締結

・2023年7月 中学生10人をエストニアに派遣

・2023年10月 エストニアを視察・協議

・2024年1月 エストニアの企業や大学とMOU(基本合意書)を締結。エストニアでの「クレボンアカデミージャパン(仮称)」を開校など。

・2024年8月 エストニア短期留学事業実施

 

・・・行政としては恐ろしいスピード感ですね。

 

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■日 時 : 2025年2月21日(金)

 開 会:19:00(受付開始:18:45)

 会 議:19:00から20:45まで(話題提供、フリーディスカッション)

 交流会:21:00頃から

 

■場 所 : ナレッジサロン プロジェクトルーム(グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル7F)

 

■プログラム

◎テーマ 「エストニアとの連携によるアントレプレナーシップの育成から、過疎地域の課題解決を目指す宇陀市の取組み」

◎話題提供者 甲賀晶子(こうがあきこ)さん

  宇陀市市長公室参事(公民連携担当)兼建設部参事(まちづくり推進担当)

奈良県庁職員。土木事務所、道路建設課を経て、地域デザイン推進課で都市計画・市街地整備・市町村連携事業等に11年間携わる。 奈良県庁では通常業務の他、まちづくりコンシェルジュの辞令を受け、民間のまちづくり活動を支援。2011年には、まちづくりコンシェルジュで培ったネットワークを活かし、奈良県内のまちづくり団体等と空き家の活用と現代アートの振興等を図るため「奈良・町家の芸術祭はならぁと」を立ち上げる。 2013年には政策研究大学院大学で公共経済学を学び、その後、リノベーションまちづくり・公民連携事業に興味を持ち、NPO法人自治経営にも属する。 2022年より、宇陀市役所に出向し、エストニアプロジェクトを担当。

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