Members Column メンバーズコラム
中小企業と学生等のマッチング
大西理之 (高松商工会議所) Vol.178
1.地域における課題
戦後、増加を続けた日本の人口は、少子化が進む中、2000年代に入ると伸びが鈍化し、2008年を境に人口減少局面を迎えている。また、平均寿命の伸長とともに高齢化も進んでいる。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」によると、2060年の総人口は9,000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になると推計されている。
こうした人口及び人口構造の変化は働き手の動向にも影響している。生産年齢人口・労働力人口・就業者数・雇用者数の推移をみると、1990年代半ばまで人口及び生産年齢人口の増加に伴い、労働力人口、就業者数、雇用者数は増加傾向にあった。しかし、生産年齢人口が1997年を境に減少に転じる中で、労働力人口及び就業者数も減少傾向で推移し、雇用者数は頭打ちとなっている。
新卒者の就職率をみると、2011年卒は91.0%と過去最低の水準となったが、2012年卒は93.6%と大きく改善している。求人倍率をみると、2011年卒は1.28倍と、1倍は超えているものの2001年卒(1.09倍)以来の低水準であるとともに、2012年卒も引き続き低く、また、2013年3月の卒業予定者に対する求人数も減少しており、依然として若者の就職環境は厳しいものとなっている。
特に人口減少が続く香川県においては、地域を支える産業人材の確保と育成が重要な課題となっている。県内事業所からの人材ニーズや今後成長が期待できる分野の人材ニーズに対応するため、産業政策と連携した人材育成や求職者の職種転換の支援などが重要である。
2.高松商工会議所の仕組み
優秀な人材の確保・定着を図るには、新卒者等へのきめ細かな支援を行うなどにより、新卒者等の就職支援に強力に取り組む必要がある。
厳しい雇用失業情勢の中、一人でも多くの求職者を就職に結びつけるためには、求人開拓の強化と併せて、既にある求人を有効に活用することも重要な課題である。
本年度、高松商工会議所は、中小企業庁補助事業「地域中小企業の人材確保・定着支援事業」を受託し、県内大学等と連携して、地域の人材を地域に確保するため、下記3点を重点目標と定め事業に取り組んでいる。
1.「中小企業の見える化」を実践し学生等に周知する。
2.学生等の「社会人基礎力(前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力)」の育成に取り組む。
3.新卒者等の定着率向上プログラムの策定と実施。
具体的には、次のような事業を行っている。
学生向けの施策においては、中小企業等の情報提供、社会人基礎力講座、起業塾等を実施し、学生のニーズに柔軟に対応する。更に、東京・大阪等の大都市圏の学生を対象に地域の魅力発信を行い、地域における労働人口の増加に努めている。
企業向け施策においては、中小企業が優秀な人材を獲得するチャンスを増大させるため、学生等の採用から育成まで段階的なセミナーを実施するとともに、産業カウンセラー等専門家派遣を行っている。
新入社員・若手社員向け施策においては、段階的なセミナーを実施するとともに企業を越えた同期づくり・仲間づくりを行っている。
地元企業に若手人材を継続的に確保するとともに、中核人材として育成し、中小企業の経営力を強化することを目標に、事業を進めていきたい。