Members Column メンバーズコラム

“ものづくりの町 大阪”

森田誠 (大阪府立南大阪高等職業技術専門校 人材開発センター)  Vol.180

森田誠

“ものづくりの町 大阪”で、働く人たちのスキルアップをご支援する府立の職業訓練施設に勤務しています。
 職業訓練の指導員として、身体の動作にハンデを持たれた方、義務教育を終えて直ぐの若い子達から、定年後、新たな仕事にチャレンジする方、年齢、性別、学歴も様々、私の場合、海外からの技術研修生(開発途上国の大学関係者、行政官、職業訓練指導員など)に、メカトロニクス技術に関する研修コース(訓練期間10か月/年)を10年間担当させていただきました。指導員生活の1/3にあたるのですが、この時、“自国のこと”をどれだけ知らないかに気づかされました。

 “工作機械の歴史”、“科学史”、“技術史”など、授業の下準備で調べてはいましたが、『この国』の歴史、『身近な大阪のものづくり』の歴史を、話せない!?・・・・。
 そんなこんなで、『ものづくりの町 大阪』を辿ってみると、たいへん興味深い歴史があることに気づきました。皆さん、シルクロードの東端をご存知ですか?奈良の東大寺 正倉院だそうです。すると、東端の港町は「大阪」となりますね。現在の、大阪市歴史博物館の南に高床式の倉が再現されています。お隣のNHK(JOBK)の地下には、倉庫群の柱跡が保存されています。その更に、南東方向に少し行くと「難波の宮跡」があります。まだ、見つかってはいませんが、「難波館(なにわのむろつみ)」という迎賓館があるとされています。大阪には、「人・もの」が集まります。
江戸時代には「懐徳堂」・「含翠堂」・「環山楼」などの儒学校、「適塾」・「先事館」など洋学に基づく医学、天文学などの私塾があり、自由学問の町でもありました。
その大阪のルーツの中で、特に私が興味を持ったのは、暦学です。現在の神戸・大阪。京都を中心に“和算”広がりを見せ、中国大陸から伝わった「暦学」を、海禁政策(俗に鎖国)下の状況でありながら、ヨーロッパの学問を身につけ、天体の周期を観測していた『麻田剛立(あさだ ごうりゅう)』達の知識と観測機具類です。貝塚の『岩橋善兵衛(いわはし ぜんべい)』の望遠鏡などもその一つです。写真の時計は、『渋川春海(しぶかわ しゅんかい)』の時代(350年ほど前)に、天体観測に使われていた「授時簡(じゅじかん)」という和時計です。これは、10年ほど前に松原高等職業技術専門校勤務時代、訓練生と再現したものです。多分、国内で完動品は、数台(これ以外に1台だけ)だと思います。
時の府庁の幹部からは酷評をいただきましたが、博物館に展示もしていただきました。シンプルな構造ですが、ギヤーバックスにネジなどの締結は無く、“くさび”で固定します。いつの世も、ものづくりには、功者(こうじゃ)だけでなく、見功者(みこうじゃ)が重要で、欲を言えば「スポンサー」でなく「パトロン」がいることですね。
少なくとも、「功者」を育てるために、「よい見功者」になれるよう精進します。
 KNSは2年目です。まだまだ新参者ですが、よろしくお願いいたします。

PAGE TOP