Members Column メンバーズコラム
カイゼン人材育成の活動を振り返って
皆川健多郎 (大阪工業大学) Vol.318
日頃よりKNSの皆様には大変お世話になっています。この場を借りて、まずは御礼申し上げます。またこの度は2度目のコラムへの投稿の機会を頂戴いたし、重ねて御礼申し上げます。訳ありの投稿の機会ですが、10年間の活動を振り返り話題提供をさせていただきたいと思います。
遡ること12年前の04年の暮れ、雑誌の原稿取材のための移動の車中、同行いただいた長年お世話になっている事務局の方より「実はこんなプロジェクトにこれから応募する予定でして・・・」とお声がけがありました。そのプロジェクトとは“産学連携製造中核人材育成事業”でした。この事業は、団塊世代の一斉退職を迎えることに警鐘を鳴らした2007年問題への対策として経済産業省が実施した委託事業です。当日は小春日和の暖かい陽が差す中、「ああ、そうなんですか」と話を聞いたわけですが、その後、05年よりその提案書作成を皮切りに、本省へのヒアリング、そして採択の後にはプログラムマネージャーにと取り組みにどっぷりと浸かることとなりました。
私が参加したプロジェクトでは、関西生産性本部が管理法人となり、ものづくり革新推進リーダーを育成するための人材育成プログラムの開発に取り組みました。「現場改善リーダーを育てるためのプログラムを開発しよう」ということで、まずは関西の大手製造業の方々のご協力をいただき、その開発に着手してまいりました。中でも特徴的なのは模擬生産ラインと銘打った教材の開発でした。「座学での教育は限界があり、学んだことの実践力を高めるためには訓練が必要」といった発想でたどり着いたのがこの教材でした。当初、パナソニック様の人材開発カンパニーにて開発した本設備は、その後、本学に移設し、社会人の教育訓練と併せて学生教育にも活用しています。開発した教材自体はハードウェアですが、実はこの教材を使ってどのように教育をするのかといったソフトウェアが重要です。本教材での演習では、単なる動作改善、工程改善、そして物流改善のみではなく、コスト、利益改善も含まれています。このようなソフトウェアの部分は産業界からの実践面での情報の提供と、学界からのこれらの体系化といった産学連携だからこそ得ることができた収穫であったと思っています。
委託事業の中で06年には学内にものづくりマネジメントセンターを設置し、活動を継続していきましたが、本学の建学の精神である「世のため、人のため、地域のために、理論に裏付けられた実践的術をもち、現場で活躍できる専門職業人の育成を行いたい」を考えたときに、「より地域のためにできることはないか?」との考えに至るようになりました。そのような中、当時の事務部長より大阪商工会議所旭城東鶴見支部(現:東支部)をご紹介いただき、地元の大企業のみならず、中小企業の方々とのご縁をいただくこととなりました。そこで本学教授の本位田光重先生と開発したのがレゴブロックを活用した組立演習の教材でした。手軽に、わかりやすく、そして楽しくといったことを狙いとしたこの教材は、当初より手前味噌ではありますが好評でした。そのような中、07年からは文部科学省「社会人学び直しニーズ推進事業」の委託事業に3年間取り組むこととなり、国からのサポートもいただきながら活動を進めることができました。さらには、その流れの中で北大阪商工会議所、大阪府商工労働部、大阪府中小企業家同友会、そしてKNSと出会いが広がり、多くの方々のご支援をいただいてきました。
その後も経済産業省のものづくり指導者養成支援事業にも取り組みましたが、最近は開発したレゴブロックを活用した演習を各所にて実施をさせていただいています。昨年度は数えると合計22回、延べ人数では300人を超える方々にこの演習を受けていただいたことになります。レゴブロックの組立作業は馴染みやすく、楽しく受講していただく一方で、改めて学習状況を確認してみると本当に理解してもらいたいところが必ずしも伝わっていないことが明らかとなりました。その点は速やかにカイゼンし対応をおこなっていますが、さらなる教材のブラッシュアップが今後の課題となっています。しかしながら、“カイゼン活動は楽しい”ということを伝える意味においては、一定の成果を収めているのではないかとも手応えも感じています。
最後に、私的な話になりますが10年前、私はまだ独身でした。仕事にどっぷりとはまっている中で関係者のご紹介から家内とのご縁をいただき、いまや5歳、3歳、0歳の2男1女の子供も授かりました。まさしく激動の10年間でした。一方で、多くの方々のご縁とご支援をいただき、改めて社会の一員であることを認識することができました。本コラムを通じて交流が広がることがあればさらなる幸せですが、カイゼンの活動が広がることにより“より良い社会づくり”に微力ながら貢献できればとも思っています。そして、“カイゼン”、“レゴブロック”で上位に検索結果が出てくることができればとも(^^)
拙い文章にもかかわらず、最後までお読みいただき感謝申し上げます。