Members Column メンバーズコラム

『産業安全文化協創センター』始動しました!
東瀬 朗 (新潟大学) Vol.756
東瀬@新潟大学です.横浜から新潟に移り住んで10年目,非常勤講師として新潟に定期的に通うようになってから14年目に突入しました.気がつけば新潟大学が人生の中で最も長く「メインの所属先」となっています.また,5月1日付で教授に昇任し,学内での所属が産学連携・地域連携の主管部署である社会連携推進機構となりました.これまでは,安全管理の研究および学部・大学院での教育が主な業務であり、地域連携や産学連携は若干の実益を伴う趣味のような位置づけでしたが,これからは特に産学連携の推進が主要な任務に加わる(学部・大学院での教育研究は従前通りの仕事量なのでシンプルに仕事が追加されていますが)ことになりました.引き続きご支援・ご鞭撻を賜れれば幸いです.
それで,2025年4月1日付で,新潟大学社会連携推進機構内に新しい組織として「産業安全文化協創センター(英文名称:Center for Industrial Safety Culture and Sustainable Innovation)」を設立しました.元々は,私の研究の柱となっている安全文化診断(従業員アンケートを用いて現場の理解と意識を可視化し、組織の安全管理上の課題を抽出する手法)を使ってくれている会社が増えてきたことから,私が各社個別に対応するよりも相互交流を促した方がいいかと思って企業3社と本学で「安全文化診断コンソーシアム」を昨年7月に立ち上げたことがきっかけでした.その後大学組織の判断で学内に独立したセンターを立ち上げることとなり,この半年ほどは新組織の設計に奔走しておりました.
個人的な想いとしては,昨今国立大の資金難・研究費減からの教員人員減,教育サービス低下や研究水準の低下,という悪循環を断ち切るために,知と資金の好循環を生むような産学連携を根付かせなければ,という組織運営的な面と,自分が専門としている産業安全や安全管理分野のように,ある程度成熟してしまい急激な成長は見込めず,論文執筆が難しい(=若手研究者・教育者の育成やリクルートが困難)領域だけれども,産業の人材育成ニーズはあり,中長期で見ても教育・研究の分野として「無くなる」とは思えない領域で着実に次の世代の研究者や産業人材を育てる基盤と作らないと,という2つがあります.
その中で,「原則として民間資金で運営を回す」「運営費交付金(国立大学に対して国から配分される予算)や補助金以外の資金源の獲得」「企業と大学の継続したパートナーシップと,企業からの長期的な資金提供に基づく教育や研究の提供」といった新しい大学運営の形にチャレンジし,地方国立大学の生き残り方のロールモデルのひとつを作れれば,と思い新しい組織を立ち上げました.今年1年で本格稼働に向けた準備期間として人事や追加資金獲得に取り組み,来年度以降企業向けに様々なサービスやコンテンツの提供を行っていければと考えています.
新しいセンターでは「産業安全分野・安全管理分野における研究開発」「企業向けリスキリング講座の提供と,企業内講師の育成」「安全文化診断など現状把握・改善のための各種サービス提供」の3つを柱に,大学が企業や社会のためにできる役割を広げていく(あるいは大学の立場やリソースがあるからこそ,企業の代わりに担える機能を担い,各企業がより自社でしかできないことに専念できる環境作りをお手伝いする)ことを目指しています.新しいセンターを支える人材のリクルートや,提供するコンテンツ作り,顧客の新規開拓など課題は山積しておりますが,これまでに築き上げてきた研究室スタッフの能力や,これまで一緒にやってきた各企業との縁を生かしながら組織作りをしていきたいと思います.もしこの分野で一緒にやっていけそうな方がいらっしゃれば是非お声がけください.
・参考
■ニュースリリース 2024/7/9 新潟大学、AGC、NTT東日本、三井化学が安全文化診断コンソーシアムを設立しました
https://www.niigata-u.ac.jp/news/2024/648746/
■新潟大学ニュース 2025/4/14 社会連携推進機構産業安全文化協創センターの銘板除幕式を挙行しました
https://www.niigata-u.ac.jp/news/2025/829892/
写真はセンター銘板と筆者です.