Activity Report 活動報告
第9回ソーシャルビジネス研究会
第9回ソーシャルビジネス研究会では、NPO法人D×P共同代表の今井紀明さんからお話をお聞きしました。
NPO法人D×Pは設立から3年目、社員4人、パートタイム、ボランティアを含めて80人ほどで活動している団体で通信制高校でのキャリア教育支援を行っています。
一言に通信制高校といってもしくみまで知っている人は少なく、全国で19万人ほどの生徒がいるとのことです。そしてそのうち7割が高校中退者の編入学であり、4割が不登校の経験者、卒業後2人に1人が就職も進学もしないといいます。
今井さんは、18歳のとき、医療支援NGO活動に参加しイラクへ。そこでイラク武装勢力に拘束され9日もの間人質となり救け出されるという事件に見舞われました。帰国した今井さんを襲ったのは「自己責任」といったメディアの批判、「自作自演では」などのデマによる誹謗中傷。多数の不穏な内容の手紙、道を歩いていて殴られるなどの被害を受け、人に会うのが怖くなり、ひきこもり状態に。
4年から5年をかけ、回復をしていかれたのですが、回復のために今井さんがとった行動は、手紙やメールなど批判に対し、住所・メールアドレスなど相手との連絡手段があるものに、一つ一つ返信をし、誤報に基づくものを解いていったこと。
また友人の支えを得たことも大きく、大阪で就職をしたあと何か若者のためになることをしたいと望んでいた頃に通信制高校の生徒たちと出会いました。
不登校や中退を経験した生徒たちは、周りから否定された経験をもっていました。
通信性高校は、普通の学校のような校舎は持たず、多くはビルの一室で、月1回から年に数回の通学で高卒資格がとれる学校です。一部公立がありますが、多くは私立で、NPO法人など外部の人材が関わりやすい、またキャリア教育の部分では十分サポートされていない領域です。
このような通信制高校卒時進路未決定の理由は、社会関係資本、成功体験の少なさがあると今井さんはいいます。それに対し、「コンポーザー」と呼ばれる長期間生徒にかかわる人材を社会人や大学生から育成。コンポーザーを通じて、「できないからやってみたいを創る」を目的に、クレッシェンドと呼ばれるプログラムを提供し、関係性の構築と成功体験の積み重ねができる環境を提供しています。
「できない」から「やってみたい」。ここまでを高校の授業として単位化した中で行うほかに、プログラム後はアートやインターンシップ、PC研修やサークル活動のアクティビティをサポート。コンポーザーである社会人も高校生から学んでいるといいます。
最近は各地からの引き合いが多くなり、定時制高校にもかかわりを持つように。活動が広がるにつれ、資金や人材の獲得なども含めあらたなチャレンジの段階に。
小さなNPOの、大きな挑戦になりそうです。