Members Column メンバーズコラム
There is always a better way.
皆川 健多郎 (大阪工業大学) Vol.785
生産年齢人口といわれる15~64歳の人口は1995年の8,700万人をピークに減少が始まり、2024年には7,400万人となっている。そしてこの減少は今後もさらに進行していくことが予想されている。単に人数が減るのみならず、現場での脅威は労働時間の減少である。かつて、2,000時間を超えていた年間労働時間も、近年では働き方改革などの取り組みもあり1,600~1,700時間へと減少している。労働投入量は、「人員数×労働時間」で表すことができるが、いずれの要因も減少していることから、その量は大きく減少していることは明らかである。減少する労働投入量を増加させることは不可能であり、限られた労働投入量を徹底的に活用する、生産性の向上こそが唯一の突破口であるといえる。
しかし、日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」の調査結果では残念ながら日本の労働生産性は低いことが示されている。さらに、その順位はG7の中で最下位、さらにOECD加盟国の中でも下位の順位となっている。このことは悲観的な結果であるが、個人的には視点を変えれば生産性向上の余地はあると楽観的にみる。私たちには多数のベンチマーク可能な国々があり、お手本を参考にさまざまな取り組みの可能性がある。デジタル技術の活用も1つであるが、単に現状をデジタルに置き換えるのではなく、より良いプロセスにしてその取り組みを進めるとすれば、そこには経営工学やインダストリアル・エンジニアリング(IE)といった管理技術が果たすべき役割は大きいと考える。特に、管理技術の1つであるIEでは、「価値とムダを見える化し、資源を最小化して価値を最大限に上げる」このことを目的としている。さまざまな資源が限られる今日、その重要性の高まりを感じる。
IEの取り組みを進める上で、その人づくりは不可欠である。かつて関西の多くの大学には管理技術を専門とする経営工学関連学科があったが、現在はそれらの学科は姿を消している。データサイエンス系の学科が一部を果たすも、データサイエンティストの育成が主眼である学科にとってIEは必ずしも主流ではない。そのような中、産業界のこれらの要請に応えるために、本学ものづくりマネジメントセンターでは、産業界と連携をしてIE教育のためのコンテンツ、カリキュラムの開発をおこない、社会人の教育を実施してきた。その中にレゴブロックを活用したラインバランスの演習がある。
この演習では、工程におけるボトルネックを認識し、単にそれを解消するのではなく、市場要求に応じた製品をより少ない工程数で実現をするということを学ぶ内容となっている。あらかじめ工程編成をおこなった4工程のラインを対象に演習は始まり、ラインバランスの向上を図りつつ、目標数の生産をめざす。目標数の生産ができれば、講師からは3工程での編成を指示され、さらに目標達成に向けた取り組みを進める。すると、当初4工程でもできなかった目標数の生産が3工程で実現され、教室に歓声が湧く。しかし、講師からはさらに2工程での工程編成を指示される。すると教室にはさらに歓声が沸き上がる。改善を止めない。演習を通じて、そのことを体験する。そして、改善の楽しさを実感する。
より良い流れはモノづくに限らず、さまざまな現場に共通する。このような考え方を多くの現場に共有をしたい。そして、このことはより良い環境により、ヒトの能力を引き出し、最大の成果をあげることを目的としている。決して、労働力強化といった人に強いるものではない。あくまでも人を中心とした考え方である。
世の中が日々大きく変化する中で、これまで体験したことのないような出来事が起こり、その対応に追われている。もはや過去のベストプラクティスは必ずしも通用しないとするのであれば、そのときどきにあったより良い方法を追究することが重要ではないだろうか。その際、私たちは最善(Best)を志すわけであるが、私はより良い(Better)でいいのではないかと思う。そしてここは関西、遊び心を持って「ベタ」でもいいのではないかと。
There is always a better way.
いつもより良い方法はある。そして、改善は永遠なり。能力を発揮する現場づくりの取り組み、今後もさらに進めてまいりたい。
