Members Column メンバーズコラム

新たな職場で、新たな取り組みを

安保 繁 (東北大学)  Vol.775

2016年以来のコラムになります。

  今年3月で国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)におけるマッチングプランナーとしての任期が満了し、東日本大震災後の復興支援事業から約13年間お世話になったJSTを離れ、4月からは東北大学産学連携機構にご縁を頂きました。改めまして宜しくお願いします。

  そこで今回は、東北大学における私の主な役割である「共創研究所」について紹介したいと思います。

  東北大学が2021年4月に創設した「共創研究所」は、大学と企業が、より密接かつ持続的な関係を築き、技術革新(イノベーション)や社会的な価値を「共に創造する(共創)」ための新しい制度です。従来の大学と企業の研究協力は、テーマや期間があらかじめ決められた「共同研究」や「受託研究」といったプロジェクト型が中心でした。しかし、共創研究所は、企業が大学内に専用の連携拠点を設置し、複数年契約を基本とすることで、継続的かつ幅広い活動を企画・実行できるようにする、組織対組織の連携プラットフォームです。この制度の目的は、産学共創をさらに振興・発展させることにあります。共創研究所制度は高い関心を集めており、創設から4年間で46件の研究所(2025年11月時点。詳細はHP参照)が設置されており、参加している企業は、自動車、電子部品、素材、化学、医療など、非常に多彩な分野にわたっています。

  共創研究所の最も重要な特徴は、その活動の柔軟性と持続性、そして大学資源へのアクセスの容易さにあります。活動内容の多様性 研究所の活動は、特定の研究テーマに限定されません。主たる目的には、「研究活動の推進」「研究テーマの探索」のほか、「人材育成」や「大学施設の利活用」など、多岐にわたる共創活動を随時企画・実行することが可能です。企業が大学内に連携拠点を設置するため、大学の教員、専門的な知見、そして設備といった資源に柔軟にアクセスできます。本学教員の支援のもと、迅速に、かつ深く大学の知識を活用できる体制が整います。

  共創研究所の設立は、東北大学が目指す大きな目標と深く結びついています。東北大学は2024年に、政府の「国際卓越研究大学」(卓越大)の第1号に認定されました。この「卓越大」として、世界的な研究競争をリードし、成功モデルを確立するためには、大学発のイノベーションを継続的に生み出すこと、そして、研究活動を支える外部資金を安定的に獲得することが不可欠です。共創研究所は、まさにこのイノベーション創出と外部資金獲得を強力に推し進める「推進装置」として位置づけられています。企業との密接な連携を通じて、大学の研究成果を社会に実装し、同時に安定した運営資金を得ることで、大学の認知度向上と研究制度の深化を図ろうという戦略的な取り組みです。

  共創研究所は、企業が中長期的な視点に立ち、大学の持つ世界トップレベルの知見や設備、そして人材育成の力を最大限に活用するための、強力な仕組みです。企業にとっては、自社のイノベーションを加速させ、将来の競争優位性を確立するための重要な拠点となり、大学にとっては「国際卓越研究大学」としての成功を支え、持続的な研究力を確保するための柱となっています。これは、大学と企業が真のパートナーとして、日本の未来の発展に貢献していくための、画期的な取り組みであると考えています。

  私は、既設の共創研究所の運営サポートや新たな設置企業の企画・営業等が主な任務となりますが、引き続き皆様と連携させて頂ければ幸いです。

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