Members Column メンバーズコラム

地域留学プログラム

鍛島 宗範 (学校法人関西大学)  Vol.704

大学生の地域実習の意義とその魅力

これまで大学生の起業支援を行ってきましたが、2024年度は新たな体験をしてもらうために地域留学プロジェクトを立ち上げ、全国7地域に学生を派遣させていただきます。現代の日本社会は、多くの課題に直面していますが、喫緊で困っていることがなくても、少子高齢化、都市への一極集中、地方の過疎化などは10年もすればかなり大きな問題になることが予想されます。これらの問題は、地域社会の活力を低下させ、日本全体のバランスを崩す要因となっています。こうした背景の中で、地域に出向き実習を行うことは、学生にとって非常に価値のある経験になると思っております。

地域実習の重要性

まず、地域実習は学生に実践的な学びの場を提供します。教室内で学ぶ理論や知識を、実際の現場で応用することで、学びの深まりが期待されます。例えば、経済学を学ぶ学生が地域の商店街で経営戦略を考える機会を得ることで、教科書だけでは得られない具体的な経営の現実に触れることができます。自分の学びが社会に生きることでモチベーションが向上し、将来のキャリア形成にも大きく寄与します。

また、地域実習は学生にとって貴重な人間関係を築く機会でもあります。地域の住民や企業様との交流を通じて、様々な価値観やライフスタイルに触れることができます。熱量の高い大人と出会うことは、学生の視野を広げ、多様性を尊重する心も育むことができます。これまでのコミュニティでは出会うことができなかった幅広い年代の方との関係性の作り方は、社会で生き抜くために必要な重要なスキルとなります。

地域の文化的背景と魅力

地域実習が特に魅力的なのは、日本各地に点在する豊かな文化的背景に触れることができる点です。例えば、音更町の文化的背景には農業が大きく関わっています。昔の農業の様子や道具などが紹介されており、農業を通じた地域の発展の歴史を学ぶことができ、東士狩獅子舞や矢部獅子舞など、入植者たちが故郷から持ち込んだ伝統芸能が町の指定文化財として保存・継承されています。これらは毎年地域の神社の祭りで奉納されており、地域の結束力を示すものとなっています。また、独自の食文化や自然環境が広がっています。これらの地域文化は、都市では味わえない独特の魅力を持っています。

学生が地域で実習を行うことで、こうした文化に直接触れ、地域の歴史や風土を深く理解することができます。これは、文化的な感性を磨くだけでなく、日本全体の多様な魅力を再発見するきっかけとなります。地域文化を学ぶことは、日本人としてのアイデンティティを再確認し、誇りを持つことにもつながります。

例えば、よさこい祭りは、第二次世界大戦後の不況を打開し、商店街の活性化を図るために高知市の商工会議所が企画し、1992年に北海道で「YOSAKOIソーラン祭り」が開催されたことをきっかけに、全国各地でよさこい祭りが開催されるようになりました。学生たちは地域の歴史や文化を肌で感じることができ、それが学びの一環として深く記憶に刻まれます。

地域の課題と学生の役割

一方で、地域には多くの課題が存在するのも事実です。過疎化や高齢化による人口減少、産業の衰退などが挙げられます。これらの問題に対して、地域実習は新たな視点で物事を考えるきっかけになります。すぐに価値を残すことは難しいかもしれませんが、若い世代のアイデアやエネルギーは、地域社会の活性化に大きく貢献する可能性もあります。

例えば、地域の農業を支援するプロジェクトに参加することで、農業の新たな可能性を模索することができます。学生たちが持つ新しい視点や技術は、従来の方法に新たな風を吹き込むことができ、地域農業の活性化につながる可能性があります。例えば、農業のICT化や、マーケティング戦略の立案など、学生たちのフレッシュなアイデアが地域の課題解決に大きく貢献することも考えられます。

また、学生が地域の魅力や課題を発信することで、都市部に住む人々にも地域の現状を伝えることができます。SNSやYouTube、ショート動画などを活用して、実習の経験や感じたこと、その土地の名産や文化、祭りを発信することで、多くの人々に地域の魅力を伝えることができます。結果として輪が広がることが期待されます。

さらに、地域実習を通じて学生が学ぶことは、将来的に地域社会に戻ってくるきっかけとなる可能性にも繋がります。実習で得た経験やネットワークは、学生たちが将来地域で働くことを選択する際の大きな財産となります。これにより、地域の人材確保にも貢献することができます。

結論

地域実習は、学生にとって貴重な学びの場であり、地域社会にとっても重要な活性化の一助となります。文化的背景に触れ、地域の課題に取り組むことで、学生は多くのことを学び、成長することができます。また、メディアを通じてこれらの活動を広く伝えることで、地域の魅力と課題を多くの人々に知ってもらうことができます。地域実習は、学生と地域社会の未来を繋ぐ架け橋となる役割を担っています。

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